表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
鏡面のクロノスタシス  作者: 悠葵のんの
一章【出会いの物語】
22/81

21話『君の祈りは届くよ。手を合わせなくても』

 あーあ。また服、傷物にしちまったな。


「はぁ……はぁ……はぁ、ぁぐッ――!」

 

 歯を食いしばり、腹に刺さった包丁を引き抜く。

 鋭い激痛。逆流する血液。せり上がってくる赤。

 しかしそれらは瞬時に、時間を巻き戻すように元の形へ戻っていく。

 こういう時、吸血鬼ってのは便利だよなぁ。

 まあ痛みはそのままだから、当然死のビジョンってやつがよぎったんだが――おかげで頭がすっきりした。


 止水の境地。冷静な思考。それによって導き出されたオレが真っ先に取るべき行動は、牽制だ。

 別の路地からこちらの様子を窺っていた騎士団の連中。そいつらに向けて、近づくんじゃねえと眼光を浴びせる。


 次は遠ざかっていく馬車の荷台。

 護衛のツバサが不穏な気配に気づいてるのは分かってる。

 だからこそ、さっさと教会に行っちまえよと目で訴えた。


 頼むから、この人に取り返しのつかない間違いを犯させないでやってくれ――と。


「え……ちょ、ちょっと! 大丈夫ですか⁉」


 刺される覚悟はあった。そうまでして止める価値があった。

 けれど実際に刺されたのは、自分ではないほかの誰かだった。

 そんな状況に慌てるなというほうが無茶なんだろうが、今は無理にでも静かにしといてもらうぜ。


「少し黙ってな」


 オレは着ていたシャツを捲って腹部を見せた。

 無論、そこに刺し傷などはひとつもない。


「少年、くん……まさか……」


 人並外れた回復能力。人並み外れた鋭い牙。

 それらを目の当たりにした女は、ひとまず言葉を失ってくれた。

 それでいい。

 ここで騒がれたら、場を見極めようとしている騎士が駆け寄ってきてしまう。

 それはちょっと困るんだ。


 だってこの人は、まだ戻れるから。


「ほらよ」


 オレは包丁を持ち直して、《カランコエ》の店主の奥さんに差し出す。

 血色の悪い顔。乱れた髪。噛み癖のある爪。

 同じだ。娘を失ったショックで路地裏を徘徊していたシンジョウと。

 他人を見失い。自分を見失い。底無しの沼に落ちていく――その一歩手前に、この人は立っている。


 きっと前のオレだったら、それを何とかしたいとは、思わなかっただろうな。

 自分のことで手一杯で、無理をする理由も余裕もなかったから。

 けど今は、そうじゃない。


「なん、で……?」


「アンタが持ってたほうが、あのおっさんも喜ぶんじゃねえの」


「わた、私っ……刺しちゃった、のに……?」


「今ので気が済まねえなら、あと一回だけ刺していいぜ。でも人はダメだ。バカでアホでクソなヤツになっちまう」


「…………っ」


 包丁を受け取った奥さんは、その重さに耐えきれず、膝をつく。


 ――オレは責任を負った。


 そして、それを果たさない結果を知った。

 町があんな地獄になってしまった原因の一端は、力を上手く使えなかったオレにあるし。

 例の告発記事ができたのだって、元を正せばオレが宿舎の壁に穴を開けたからだ。


 ()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()


 それは本当に、寝覚めが悪くなって仕方がないこと。

 だからここに来た。

 そういうのを取りこぼさないようにしたかったから。


「にしても、アンタが来たのは意外だった」

 

「……最初で、最期の……一回のつもりだったの……」


「ん」


 この道の先に構えた教会を見る。

 雨粒に反射する街灯の明かり。それに照らされる正門の前には馬車が止まっており、中にはもう誰も乗っていない。

 何事もなくとはいかなかったが、護送は完了したらしい。


「あの人……もう行っちゃった。……私、これからどうすればいいの……?」


 オレを、そしてその先の、雨雲に覆われた夜空を見上げる奥さん。

 その頬に流れる雫は涙ではなく、ただの雨粒だ。

 きっと、今のこの人は泣けない。

 泣くことすらできないから、行き先を決めあぐねている。

 けど、これでいいんだ。


 ()()()()()()()()()()()が、()()()()()()()()()()()()()に戻っただけだが。

 それでもとりあえず、あの包丁が誰かを殺したり、奥さんが騎士団に捕まるなんて事態は避けられたんだから。

 

 オレにできるのはここまで。これが精一杯。

 あとのことは、もっと相応しいヤツに任せるとしよう。


「さっき意外だって言ったのはさ、アンタならヤケは起こさねえだろうなって思ってたからなんだぜ? だってアンタは、自分で思ってるよりずっと独りじゃねえからよ」


 そう言いながら隣の女に目線を送る。

 女はすぐにオレの言いたいことを理解して、奥さんの身体を軽く抱きしめた。


「……そうなんですよ。あのお店を居場所にしていた子供たちは、いつだってあなたの助けになりたいと考えています……」


「そんなの、ただの傷の舐め合いだって……お互い分かってるくせに……」


「分かってます……。それでも、どんな形でも、あなた方に救ってもらったんです。もう一度生きることができたんです。だからお願いします。今度は私たちに、助けさせてください……!」


 その優しい懇願に、返事はなかった。

 だが同時に、それを問い詰めるような言葉もなく。

 二人はしばらくの間、ひたすら冷たい雨に濡れながら――小さな温もりを抱きしめていたのだった。


「やあ、クレハ」


 一週間後。とある探し物が終わり、北区へ出かけることを考えていた矢先。

 東区の噴水広場に設置された復興支援者用の仮設テントに、アヤメさんがやってきた。

 しかも、いかにもお忍びという恰好で。


「アヤメさん、どうしてここに?」


 ゆるめのお団子ヘアに、度の入っていない黒縁眼鏡と、普段とはまったく印象の違う騎士団長様の登場に、オレは首を傾げる。


「うん、以前中断したデートの続きをと思ってな」


「マジですか⁉ いやでも今日は……なんでしたっけ、慰霊のなんとかって。忙しいんじゃないですか?」


「確かに夕方からは追悼式がある。だからこそ、今しか暇がないのだ」


 そう言って少し困ったように笑うアヤメさん。

 その表情と普段とのギャップに胸を打たれたオレは、言われるままついていくことにした。


 まあ、元から断る気なんてなかったけどな。

 オレからも、ずっと迷ってはいたけど、アヤメさんに伝えなくちゃいけないことがあったし。


 そういうことで案内されたのは、西区にある小さな喫茶店だった。

 昔ながらのレトロな雰囲気の、純がつくような店。


「――――」


 店内に入ったオレは、思わず息を呑んだ。

 ここ、とんでもなく再現度が高いぞ。異様といってもいいぐらいだ。


 床、壁、家具は敢えて摩耗させることで歴史の長さを演出し、木材に絡みついたコーヒーの匂いや、卓上に置かれたメニュー表、紙ナプキン、灰皿など細かいところにも、とにかく余念がなく。

 窓から見える景色、日の差し込み加減、観葉植物、ゆったりと流れる音楽まで、まるで本物以上に本物らしい――ひらすらに、ここが異世界であることを忘れさせる空間。


 元の世界にあってリタウテットに無い素材が多々ある以上、ここまでの完成度に至るまで、一体どれだけの時間と金が掛けられたのか。

 こう言っちゃなんだが、金持ちの歴史再現だな……こりゃ。


 ベストが似合う初老のウェイターに案内され、一番奥の席へ。

 適当に飲み物を注文し、びしっとした革張りの椅子に座る。


「……すげぇっすね、ここ。なんだか落ち着かないですよぉ~……」


 オレに宿ったシンジョウの記憶には、前世で純喫茶に行ったことがある記録(えいぞう)も存在していた。

 だから嫌でも、この()()()()()()()()()()というものを実感してしまう。


 つーかあいつ、前世じゃあ喫茶店巡りがちょっとした趣味だったらしい。

 リタウテットに来てからも、それなりに気に入った店があったみたいだが……いや、これ以上は考えなくていい。

 

「西区は八重城――お姫様のお膝元だからな。文化の継承と存続を名目に、ホームシックを力づくでどうにかできてしまうお偉い方が多いのだ」


 そしてこういった場所は内緒話に向いている、とアヤメさんは付け足した。

 お偉い方か。お姫様って言葉が出たけど、王様とかもいるのかな。


 一瞬、オレ以外の記憶が再び脳内に広がりかけたので、軽く頭を振った。

 あんまり他人の記憶に頼りすぎると、人格ってのが揺らぎかねない。

 前にレイラにも言われたことだし、注意しとかねえと。


「最近は復興作業を手伝ってくれているそうだな」

 

「あ~、瓦礫どけたりとか、簡単なことですよ」


「謙遜した言い方だな。聞いているよ。用意された賃金は受け取らず、食事と寝床さえあればいい変わり者の助っ人、だとか。悪くない評判だ。君は……変わったな」


「そんなことないですって。ただ探し物してただけで、それに町を壊しちまったのはオレもだし。見返りを貰うようなことじゃないってだけで」


「いや、やはり変わったよ。今の君からは、どこかツバサを思わせる何かを感じる。そしてそれは、少し注意すべきことのように思う。ただの勘だが」


「…………」


 話が途切れたところで、注文した飲み物がやってくる。

 アヤメさんはコーヒー。オレは、カフェオレだ。


「――本題に入ろう。まずはこれを」


 茶色の封筒がテーブルの上に置かれた。

 厚みは一センチ弱。中身がなんであるか想像するのは容易かったが、オレはとぼけたフリをして聞いてみる。


「なんですか、それ」


「ここ数日分の賃金だ。この前の護送に協力してくれた分も入っている。その節は本当に感謝しているよ。対象だけでなく《カランコエ》のご婦人も守ってくれたのだ。被害者も、そして加害者も出さなかったのは、まさに最善の行動だった」


「いや、オレは……」


「君は、貰える物は貰っておくタイプに見えたが?」


「……そう、だったかも」


 レイラのシチューも、《カランコエ》でのタダメシも、オレは特に遠慮しなかったもんな。

 受け取らないって選択肢はなさそうだし。だったら多分、これでいいんだ。


 オレは封筒をポケットにねじ込んだ。


 その際ちらっと確認したのだが、中には最低でも十万タウ――リタウテットでの共通貨幣――は入ってそうだった。

 十万タウ。前にレイラから貰った分とほぼ同額だ。

 失くした分の金を稼ぐという目標は、期せずして達成しちまったらしい。

 なのに素直に喜べないのは、オレの感覚がおかしくなっちまったんだろうか。


 自分が自分じゃないような、心の置き所が分からない感覚に襲われたオレは、当てもなく天井を見上げる。

 で、そんなオレの心情を、案の定アヤメさんはお見通しで。


「次の話にいこう」


 気持ち柔らかめの声で話題を変えられた。


「クレハ、学校に行ってみる気はないか?」


「ええ……? なんですか急に」


「本当は騎士団に勧誘を、と考えていたのだがな。今の君にはそっちのほうが重要だと思った。リタウテットはまだまだ未開拓の世界だから、知識や価値観のすり合わせも兼ねて、学ぶという行為はとても重要視されている。寮に入ることもできるし、支援金も出るぞ」


「支援金?」


「勉強ができてお金も貰える、ということだ」


「それは、はぁ……まあ……」


 寝床と生活費が手に入る。それはわりと、どころかかなり美味しい話だ。

 学校……か。

 勉強したい、という気持ちはないこともない。

 生きるために学校に行く必要があるかっつったら、経験上そうとは限らないが。

 でもどの分野でも知識がありゃあ、生きるのが楽になるのは確かだ。

 学校っていう場がないと、案外勉強の機会なんてないしな。


 けどなぁ……オレ、前世じゃあ学校行ったことないんだぜ?

 それこそ小学校すら。

 ……集団行動とか、まったく馴染める気がしねぇ。


 生きるために必要なことは自然と身に付いたし、さらに吸血で得たツバサとシンジョウの記憶は、リスクはあるが常に見れるカンニングペーパーみたいなもんだ。

 中途半端に、学校行かなくてもやっていける状態なんだよな。今のオレぁ……。


「……なんか頭痛くなってきちゃいました」


「答えはじっくり考えて出すといい。……さて、最後の要件を話そうか」


「まだ何かあるんですか?」


「長くなって申し訳ない。だが、この話はまず前置きからさせてくれ」


「はぁ……」


 カフェオレを飲みながら、話を聞く姿勢を見せる。

 するとアヤメさんは特別製の手袋を着用し、どこからともなく一枚の羽根を取り出した。

 

「あっ、それって」


 その羽根には見覚えがある。

 アヤメさんと初めて会って、宿舎に案内された時。

 去り際にアヤメさんが落とし、けれども次の瞬間には消えてしまった――炎を帯びた羽根だ。

 そういや妖刀が現れた時にも見た気がするな。

 見間違いじゃなかったんだ、アレ。


「私は、自らの羽根を使い魔として使役することができる。こんな風にな」


 小さく炎の弾ける音がして、アヤメさんの手にあった羽根は一匹の鳥へと姿を変えた。

 防火性の手袋を足場に、鋭い眼差しをこちらに向ける火の鳥。

 その身に纏う消えない炎は、コントロールされているのか、アヤメさんの赤メッシュのようにごく一部に止められている。


「この使い魔は私の目となり耳となる。不死鳥の炎の特性上、非常時以外はそう多く使わないのだが、ティアーズ卿の頼みで君にも一匹つけていた。心当たりはないか? どこかで鳥の鳴き声を聞いた、とか」


「……あ! 森で道に迷ったときに聞こえました! あの鳴き声コイツのだったんですか⁉」


「正確にはこの個体ではないのだが、そんなこともあったな」


 アヤメさんはそう言いながら、近くの窓を開けてそこから鳥を放った。

 不死鳥の炎は使い手の死をトリガーとすることでしか消せない。

 あの鳥も同じなんだろう。

 だから普段は多用できない、と。


 それを理解したところで、アヤメさんの表情が変わる。

 お忍びの姿ではありながらも、このリタウテットを守護する《不死鳥(ナイツ・オブ)騎士団(・フェネクス)》の団長としての顔に。


 前置きが、終わったんだ。


「妖刀出現の折にも、状況把握やその対処のためにこの力を使用した。そこで私は、使い魔の一匹を通して目撃したのだ。――マリアが人並みならぬの力を使った光景をな」


 刹那。一瞬の瞬きの際。目蓋の裏側に投影される雨の日の記憶。


 ――弎本(さんもと)真理亜(まりあ)。それが私の名前。


 連鎖的に想起する、シンジョウの記憶。


 ――路地裏。死者がそのまま立って動いているような少女。


 そして、あの雪の日の記憶。


 ――オレとマリアが倒れている最期の光景。


 静かに血の気が引いていく一方で、話は続けられる。


「結果は彼女にとっても計算外だったようだが、それは他者を守るために使われた。……しかし、物が物でな。マリアは懐から()()()()()を取り出し、去来した巨大な岩石を一刀両断したのだ。……クレハ。君は彼女の力の起源を知っているか?」


「……いや」


「そうか。……これは、あくまで可能性の話だから、落ち着いて聞いてほしいのだが」


 その先の言葉は聞かずとも分かった。

 だってそれは、オレがアヤメさんに話すか悩みに悩んで結局、伝えることを選んだ事実だったから。



「――あいつは妖刀に関係してますよ」



 そう言い切った時、一秒前まで聴こえていたすべての音が遠のいた気がした。

 でも次の瞬間には、心臓がやかましく早鐘を打っていて。

 だというのに思考はどこまでも、冷静だ。


「それは、本当か?」


 さすがのアヤメさんも、そんな答えが返ってくるとは思わなかったんだろう。声に僅かな動揺が乗った。

 多分、まだ全部が可能性の段階だったんだ。


 マリアが妖刀に関わっている可能性。

 ならばそれは妖刀の作り手の味方か、あるいは敵対する立場か。

 人並外れた力は先天的なモノか、後天的なモノか。

 前世での死因は。オレとの関係は。

 すべての要因がたまたま偶然に重なってしまった可能性は。


 そういったものをひとつひとつ検証することは、地道だが真実への確かな道のりになる。

 けどそれじゃあ、()に間に合わないかもしれない。

 だからオレは、不確かでも伝えることにしたのだ。


「証拠はまだないです。けどシンジョウの記憶とか、弎本って苗字とか、はっきりしないけど細々とした断片はあって……そういやオレ、なんであいつと一緒に死んだのかも分かんねえ……」


「……話してくれてありがとう。この件は私のほうでも調査しよう。彼女の居場所は分かるか?」


「いや……さーせん、知らないです」


「そうか。……中央都市にいるならどこかに部屋を借りているはず。まずはそこからだな。時間はかかるが、調査(こと)は慎重に進める。もしその間に新たな妖刀が出現した場合は――」


「オレもできるかぎり戦います。町をぶっ壊させねぇってのが、オレなりに背負った責任(ねがい)なんで」


 それにマリアからは、またねって言われてる。

 オレが何もしなくたって、いつかは向こうからやってくるさ。

 当然それじゃあ守れないものがあるから、自分なりに色々やってみるけどな。


 ――聖戦に勝ちレイラの願いを叶える。

 ――妖刀およびマリアの調査を進める。

 ――町と住民を守るために剣を振るう。


 これが今の、オレの目標ってわけだ。


「ま、バチコーンってやってやりますよ」


 どっちにせよ、オレにはそれしかねえし。


「……願いを託せたのが君で良かった」


「えっと……?」


「褒めているのだ。君ならきっと、聖戦を勝ち進むことができる」


「それは……どうも……?」


 毎度のことだが、褒められた時ってどう反応するのが正解なんだろうな。

 とりあえず、笑顔を浮かべて、それを返事とした。引きつった不器用な笑顔を。


「話はこれで終わりだ。付き合ってくれて感謝する。……丁度、時間だな。もう行かないと」


「追悼式でしたっけ。何するか分かんないですけど頑張ってください」


「なに、私がやるのはちょっとしたスピーチだ。重要なのは生者が死者を供養し、未来に向き直ること。誰が何を祈るか、だよ。君はどうする?」


「オレは……いいです。知らないヤツに祈られたって、向こうも困るだけですよ」


 だからオレは、オレにできることをやらないといけない。


「そうか。君らしい考え方だと、私は思うよ。ではまた」


 そう言ってアヤメさんは、オレの分まで代金を支払って店を出た。

 残っていたカフェオレをぐっとあおり、オレも席を立つ。

 

 行き先は決まっている。

 北区の教会特区――シンジョウの奥さんに、渡すものがある。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ