表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
穏やかな恋  作者: 里桜
9/30

9. 俺が、泣いた

「おい大樹、ふたりで赤くなって、何かあった?」

通りに面したドアを開けて、カズさんがニヤニヤ笑いながら声を掛けてきた。


「加納さん、ですよね? わざわざ申し訳ないです。先日は、本当にありがとうございました。立ち話もなんだし、少し話したいこともあるので、良かったら中へどうぞ。美味いコーヒー淹れますよ。それとも、もうちょっとコイツと外で話します?」

「あ、中に入ります。また倒れられたら困るので」

「確かに。大樹、お前も入れ。コーヒー買ってきてないんだろ? 一緒に飲もう」


彼女を先に事務所のオフィスに案内し、カズさんが振り返って言った。

「倒れた理由は、俺から話しておくから。加納さん、電話くれた時めちゃめちゃ心配してたぞ」



それから30分くらい、経っただろうか。

次の収録の台本を読んでいて、気付いた時には『失礼します』と、会釈をして彼女がオフィスを後にしていた。


「嘘だろ!?」

慌てて後を追いかけた。

「あ、おい大樹、待て…」

背中からカズさんの声がしたけれど、彼女を追うのが先だった。


「加納さん、待って…」

声が聞こえたのか、彼女が立ち止まった。


ようやく追いついた彼女の肩が、震えていた。

もしかして、泣いてる…?


「加納さん…?」


「松島さん、こないだ倒れる前に呼んだ名前は『ミサキ』…だったんですね。さっき山下さんに、ミサキさんのこと聞きました」


「……」


ふうっ。

ため息をついて彼女は言った。


「恋愛って、ほんっっっとしんどいですよね。どうして私だけこんな思いしなきゃいけないんだろうって、本当に嫌になって。どこかに穏やかな恋は落ちてないのかって、真剣に考えちゃいますよねー」


アハハと、半分泣きながら声を出して笑う彼女に向かって、

「…何言ってんの加納さん、そんなの落ちてるわけないじゃん…」


「やっぱり無いのかなー」

そう言って俺の顔を見た、彼女の動きが止まった。


今度は俺が、泣いていたから。



評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ