6. 彼の重さと横顔と
ドサッ…。
両肩が急に重くなった。
「うっ…」
これは支えきれ…ない……けど、助けなきゃ。
「おい!大樹! 大丈夫か!?」
近くの席に座っていた男性が、私と彼の間に入りこむようにして彼の上半身を支えた。
「ご…めん、カズさん、ダメ…かも…」
どんどん顔色が悪くなっていく彼を支えながら、男性は椅子にかけてあったバッグを拾い上げた。
「送っていくから帰ろう、な、無理すんな!」
彼にそう声をかけて、男性は私の方を見た。
「申し訳ない! 大丈夫ですか?」
「はい…まぁ、なんとか」
「あなた、コイツが誰だか知ってます…よね?」
「はい…」
「良かった! これ、うちの事務所の連絡先。お礼したいから、必ず連絡ください!」
「いや! 全然! お礼なんて、そんな!」
「いや、コイツがケガしなかったのは、あなたのおかげだから。絶対連絡して! 俺が社長に怒られるから、必ず!」
「ほら、帰るぞ大樹」
力の抜けた彼を肩と腕で支えながら、お店を出る前に振り返ってもう一度言った。
「必ず電話して。待ってるから!!」
そんな、待ってるって言われても…。
それより、大丈夫なんだろうか。
あんなに、苦しそうで。
ふたりの後ろ姿を見送りながら、そういえば…彼は私の肩に倒れてくる前に、誰かの名前を呼んでいた。
「誰だったかな…」
手元に残った男性の名刺を眺めつつ、倒れてきた彼の重さと、苦しそうな横顔が、しばらく頭から離れなかった。