1. 出逢い
ゆっくり幸せを感じられるような、穏やかな恋がしたい。
もう、あんな思いはしたくないから。
どうしたら、そんな恋ができるんだろうか…。
「あーーー、やっと終わった〜!」
人間ドックを終えて、のびをしながらビルの外へ出た。
帰り道、新しい香水を買うためにデパートに寄ろうと考えていたけれど、朝から何も食べていなかったから、少しお腹に入れたかった。
周りを見渡すと、何件かのファストフード店やコーヒーショップが目に入った。
「まぁ、近場でいいかな」
すぐ近くのファストフード店に入った。
「えーっと…チーズバーガーとブレンドコーヒーのSで」
番号札とブレンドコーヒーの乗ったトレイを渡され、ゆっくりしたかった私は、お店の奥へ入っていった。
段差のあるフロアを上がった時、ほんの一瞬、時間が止まった。
「あれは、確か…」
何度かテレビで見かけた彼が、そこにいた。
パラパラと紙をめくり、何か資料を読んでいるようだった。
自分でも気付かなかったけれど、私は立ち止まって、少しの間、彼を見ていた。一般人に見られることに慣れているのだろう、彼は顔を上げることなく、ずっと手元を見ていた。
これが、私と彼との出逢いだった。