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後日談(その7)

     *


 カチャリ。と、取調室の扉が開いて、警視庁捜査一課所属の司馬吉仲が中に入って来た。テーブルには男がひとり。口には猿ぐつわを噛まされ、両手は手錠でテーブルに繋がれている。司馬は、男の顔を覗き込むと、彼の前に座り、自分の左手にも手錠を掛けると、男と同じように、自らをテーブルに繋いだ。それから、部屋の隅に立っていた二人の刑事に、部屋から出るよう合図すると、取調室の扉が締まり切るのを待ってから、テーブルの男・コムラサキカオルの猿ぐつわを外してやった。


「いいのか?」と、男が訊いた。

「いいんだよ」と、司馬は答えた。

「お前を操るかも?」

「お前には操られねえよ」

「なぜ言い切れる?」

「俺がそう想ってるからだよ」

「自信あり気だな?」

「あるバカから言われたんでね」

「なにを言われた?」

「ひとつ、俺は性格がすこぶる悪い」

「なるほど」

「ひとつ、お前は人を操ることに疲れている」

「……なるほど」

「ひとつ、お前の能力は――理由はよく分からないが――かなり弱められている」

「…………なるほど」と、男は、司馬から目をそらしながら応えた。


「何故、そう考えた?」と、男が訊いた。

「考えたのは、俺じゃねえよ」と、司馬は答えた。

「『あるバカ』か?」

「癪には触るが、仕事は出来るバカだ」

「なるほど……で?」

「そのバカでも分からない事があるらしい」

「なぜ捕まったか?」

「なぜ倒れていたか?なぜ能力が消……弱まっていたか?」

「自分でも分からん」――途中からの記憶が消えている。

「赤毛の女の子か?」――石神井のバカはあの子を疑っている。

「それも、分からん」――彼女はただ、私の前に立っただけだ……よほど気に喰わなかったんだろう。

「そうか。なら良いさ」――彼女の周りで、『悪いこと』は何も起きていない……不自然なほどにな。


 それから司馬は、ふたたび男に猿ぐつわを噛ませると、「助かったよ」と言った――石神井のバカは色々言うだろうが、俺的にはこれで十分だ。そうして彼は、左手に掛けていた手錠を外すと、扉から外へ出ようとしたところで、フッと想い出したように、男の方を振り返ると、「あの姉さんについては……」と、言った。「――出来るだけのことはしてみるよ」


 カチャリ。と、取調室の扉が閉まった。――男は、少しだけ、微笑んでいるようであった。


(終わり……?)


     *

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