I'm sorry(Part3)
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「先を急ぐよ……ごめんな――」と、山崎和雄は言った。
電話の向こうで、友は笑ってくれた。
「勝手な僕を許してくれ――」いつも、突然の連絡ばかりだ。
電話の向こうで、友が祈ってくれた。――《わが君の長寿と繁栄を!》
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「涙は、こらえてくれ」と、男は言った。
タクシーの運転手が興味深そうに――いや、心配そうに、自分たちのことを見ているのが分かった。喫茶店へと向かう。この女はいつになったら自分のことを分かってくれるのだろうか?――いや、あの老婆の言うとおりかも知れない。歩み寄るべきは自分からなのだろう。すまない……と小さく呟いた。
「おまえには、甘えてばかりだ――」
……だが、きっと、許してはくれないだろうな。
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ピロン。
と、河井保美の携帯が鳴った。
山崎和雄からのメールだった。
『多分、言い忘れていました』
と、表題にあった。
『あなたのおかげで、ぼくでいられそうです』
と、本文にあった。
それだけだった。
なんてひどい男だろう――と、保美は想った。
嘘と言い訳ばかりだった頃の方が……いや、――《ホレイショー。これでお別れだ。》
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ぱっぱっぱーら、ぱっぱっぱ、ぱらっ、
ぱっぱっぱーら、ぱっぱっぱ、ぱらっ、
ぱっぱっぱーら、ぱっぱっぱ、ぱらっ、
ぱっぱっぱーら、ぱっぱっぱ、ぱらっ、
練馬区立緑ヶ丘中学コーラス部総勢24名マイナス1名プラス坂本1名プラス浅野1名 (ギター)の演奏は、未だ続いていた。
ぱっぱっぱーら、ぱっぱっぱ、ぱらっ、
ぱっぱっぱーら、ぱっぱっぱ、ぱらっ、
ぱっぱっぱーら、ぱっぱっぱ、ぱらっ、
ぱっぱっぱーら、ぱっぱっぱ、ぱらっ、《たとえ天堕ち、山崩れたとしても》
ぱっぱっぱーら、ぱっぱっぱ、ぱらっ、
ぱっぱっぱーら、ぱっぱっぱ、ぱらっ、
ぱっぱっぱーら、ぱっぱっぱ、ぱらっ、
ぱっぱっぱーら、ぱっぱっぱ、ぱらっ、《闇が地を覆い、月明りすら見えずとも》
ぱっぱっぱーら、ぱっぱっぱ、ぱらっ、
ぱっぱっぱーら、ぱっぱっぱ、ぱらっ、
ぱっぱっぱーら、ぱっぱっぱ、ぱらっ、
ぱっぱっぱーら、ぱっぱっぱ、ぱらっ、《それでも我々は、歌い続けなければ――》
ワン・ツー・スリー・フォー!
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