69/86
ぼくらはしずかにきえていく(その5)……或いは、そう。それでも、《ショウは続けなければならない》
*
『ラーーラーラー、ラーーラーラー、
ラーーラーラー、ラー、ラーラーー。』
転調後のサビも終わり、一音上がったコーラスに繋げるように、そのコーラスの邪魔にならないように、坂本が三度目となるメロディーを、
『タンタ、タンタ、ターー、』と、こちらも一音上げて、弾いた。
『タンタタタン、タンタタタン、タンタタタン、タン……』
それから彼は、時の流れに逆らうように――きっと彼もこの時間を少しでも長く止めておきたいと考えたのだろう――不自然にならない範囲で、ちょっと長めのフェルマータを取ってから、『ターーン』と、最後の和音を、名残り惜しそうに、弾いた。
コーラス部の皆が皆、いまの自分たちの演奏に満足を感じて――いや、驚きを隠せないでいた。
が、しかし、いや、それでも、ここで終わらせては、あまりにも世界は悲し過ぎる――そう。それでも、《ショウは続けなければならない》
「えー、それでは」と、皆をふたたび音楽へと奮い立たせるために、坂本が言った。
「軽音部からのスペシャルゲストです。オン・ギター、浅野正之」
*