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アブラハムには八匹の子(その1)

 さて。いささか唐突であるが、アブラハムには八匹の子がいた。

 と言っても、「八匹」と書いたことからもお分かりのとおり、この「アブラハム」は、創世記に出て来るあの人でもなければ「偉大な解放者」と呼ばれたあの人でもない。千葉県船橋市に住むボーダー・コリーのオス「アブラハム」のことである。

 で、また「八匹の子」と書いたワケだが、そこはもちろん、多くの動物のオスがそうであるように、このアブラハムもまた、その八匹の子らとともに暮らすこともなければ、その存在を理解しているかどうかすらも怪しかった。

 まあ、でも、しかし、いくら父親がそんな感じであっても、「八匹」は「八匹」であり、彼ら彼女らが生まれて生きている・生きていたことに変わりはない。

 なので、『なんでそんなことを?』と思われる方もあるかも知れないが、この「八匹」とその系譜について少し話をしておきたいと思う。


 先ず、一匹目の子どもはエルである。

 彼は、アブラハムが、ご主人である人間のメスとともに千葉県北西部にある某オートキャンプ場へ遊びに行った際、そこで出会った雌犬との間で交渉を持ち出来た子である――が、まあ、お察しのとおり、この雌犬とは一晩限りの付き合いであり、その後二度とバッタリ出くわしてすらいない。


 次に、二匹目の子供はイッツである。

 彼は、こちらもアブラハムが、ご主人である人間のメスとともに神奈川県南部にある某海水浴場へ遊びに行った際、そこで出会った雌犬との間で交渉を持った結果出来た子である――が、こちらの彼女とも二晩付き合って別れた。

 まあ、こちらの彼女とは、その後、一度だけではあるが、浦安の某ショッピングモールの駐車場でバッタリすれ違ったりしているのだけれど、互いに互いのことに気付かないでいたりした。

 ちなみにこれはまったくの余談だが、互いの愛犬が二晩続けていちゃついていたことに双方の飼い主が気付いていなかった――と云うのも妙な話のようではあるが、この理由と云うのも実に簡単で、この飼い主たちの方も二晩続けていちゃつき合っていたため、それどころではなかったからである。

 まあ、であるからして、イッツの母犬の腹が大きくなった際、そのご主人である人間のオスは、彼女を強く責め立てることが出来なかったし、それに加えて、アブラハムの飼い主である人間のメスと連絡先を交換し合わなかったことを後悔したりしなかったりした。何故なら、場合によっては、自分がアブラハムの立場に立たされていたかも知れないからである。


 ――なんの話をしてるんだったっけ?


 そうそう。だから、まあ、そんな人間どものことはさておき。

 この二匹――エルとイッツ――以外のアブラハムの子としては、この二匹のことをまったく知らないのんきなご主人であるところの人間のメスが、別途アブラハムにお見合いをさせて生ませた六匹の子たち――ジム、シャン、ダン、アン、バク、シア――がいる。


 ――ほんとうに、なんの話をしてるんだったっけ?


 そうそう。それで、いま話そうとしているのは、この二匹目のイッツ……と云うか、更にその子どもについてのことである。

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