無題
駅の口が人を吐き出す
街灯の下、足早に歩く人の群れに、僕はそっと紛れ込む
肩を押さえて首をはねれば、透き通った血がぱっと飛び散る
周りの人は気にしない
誰もこっちを見ていない
街は透明な人で溢れてる
家に帰って夕食を作る
透明な人を料理する
透明な人は透明な肉に、そして透明な料理になる
つけっ放しのテレビの向こうで、紙がしゃべって衣装が踊る
朝がくれば、駅に電車がすべりこむ
イヤホンから出た音楽が、狭い車内を満たしてる
ホームの端から人が落ちる
電車がそれを撥ねとばし、速度を緩めず走ってく
黄色い車体にべったり血がつき、瞬きする間に消えている
仕事を終えた帰り道、誰かに肩を叩かれる
振り返っても何もない
あくる朝、僕は食卓に並んでる
僕は透明な料理になる
つけっ放しのテレビの前で、僕は誰かの肉になる