5話 2日目 僕と喜びと消したい記憶
短くてすみません。
「…んーーん。」
「…ん?ここ…どこ…?」
僕は身体を起こし、周りを見る。
「あー…まだ夢の…中…?」
頰を抓ってみる。
「痛い……夢じゃ…ない?」
そういえば…ナツキにビンタされた時も痛かった…
それに、夢の中としては料理の味がはっきりと分かった…
神様が夢じゃないぞ、現実じゃよ。って言ってた…
……まじ?現実なの?
「…やっったあああああああああああ。」
スキル、魔法、ステータスがある世界。
ゲームや小説でしか無いと思ってた世界。
何度も想像して楽しんでいた世界、だがそんな事はあり得ないと諦めていた世界。
コンコンコン
そんな世界に勇者召喚で転移した事も夢だと思ってた僕が、これが現実だと知ったらどうなるか…
「マジかマジかー!現実なの?リアルなの?本当なの?」
テンションが上に限界突破して、ベッドの上を飛び跳ねる僕。ニヤニヤしている僕。
「まずは魔力操作を覚えよう。そしたら魔法を使えるようになるはず。で魔力制御も覚えて、魔力消費とか効率を良くして……あー考えるだけで楽しい!それが出来るのが嬉しい!やばいやばい!!楽しくなってきたあああ!」
「…気持ち悪い」
僕は飛び跳ねるのをやめて、声のした方へ振り向くとナツキがドアを少し開いて見ていた。
「………おはよう。朝からどうしたの?」
「何事も無かったように真顔で挨拶されても、今の行動は無かった事に出来ないからね!」
「そこは何も無い、何も見てないってことにしてよ!てかなんでノックしないのさ!」
「ノックしたよ!
大きな声が聞こえたから心配してきたのに、すごく気持ち悪い顔で笑って楽しそうに飛び跳ねてるから、心配して損したよ!まったくーもうー!」
「もうーって言いたいのはこっちだよ!もう!
…そうだ…ここは異世界だ…記憶を消す魔法があるはず…それを覚えよう…ナツキが何も覚えてなければ…何も無かった事に出来る…」
「今の!声に出てるからね!記憶を消さないで!誰にも言わないから!」
「ハルなら本当に覚えて消しそうだね。」
タツヤがおはようと手を上げて、部屋に入ってくる。
「タ、タツヤ?!もしかして…タツヤも見てた…?」
「…見てない…聞いてない…よ?」
「2人に見られてた…」
僕は崩れ落ちる。
もう2人いるけどね…とタツヤがボソッと言ったのが聞こえてしまった。
「なん…だと…」
僕は絶望した表情で顔を上げドアを見る。ドアがそーっと完全に開く。そこには申し訳無さそうな表情のアティとクラスメイト兼ゲーム友達のアヤさんが笑顔で立っていた。
「ハルキ様…すみません。」
「いや…アティは悪くないよ…」
アヤさんが近づいてきて僕の肩に手を置く。
「ハルキ、大丈夫よ。」
「………」
「私も同じ事をしてたのよ。昨日喜んでベッドの上を飛び跳ねてたわ。だから、恥ずかしがる事ないわ。」
「アヤさん…」
「ほら、いつまでも落ち込んでるなんてもったいないわよ!そんな事してる暇があるなら、さっき言ってた魔力操作を覚えて、早く魔法を使えるようになりましょう!」
アヤさんが手を差し出す。
「…アヤさん!そうだね!もったいないね!
ありがとう!アヤさん!」
僕はアヤさんの手を掴み立ち上がる。
僕とアヤさんは見つめ合い、ハイタッチして、握手して、抱き合って背中を軽く叩きながら、笑い続ける。
「「同士よ!ワッハッハ(アッハッハ)!」」
「素晴らしい友情ですね。良いですね。」「そう?」「うん。仲が良いよね。」
憧れるアティ、首を傾げるナツキ、アティに同意するタツヤ。
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