3話 僕とタツヤ
報告をした後、勇者の歓迎と勇者召喚の成功を祝して、立食パーティーが行われた。
「勇者の皆様、我が国は皆様を心より歓迎の意を申し上げます。
そして、魔術師達よ!さすが我が国の魔術師だ!よくやった!お主達のおかげで勇者の皆様を迎える事が出来た。この国は救われるだろう。
今この国はーーー」
あー長い。校長先生の話も長いけど、なぜこうも偉い人の話は長いんだろう。あークラスメイトの男子なんかほとんどは目の前の料理に釘付けで話を聞いてないよ。
「今宵は、楽しもうではないか。では、頂くとしよう。乾杯!」
「「「かんぱーい。」」」
「「「いただきまーす。」」」
男子は肉の塊を取り齧り付く。
「うめー!うめーぞ!これ!」
「なんだこの肉?美味すぎる!」
「この溢れる肉汁!舌で切れる柔らかさ!美味い!」
その男子達を冷めた目で見ている女子達。
「あのバカ3スケやばくない?」
「あれはないよね…」
「料理すごく美味しいけど、あれはないね。」
「うん、あれはない…汚い…」
バカ3スケとはハルキに絡んできたアカギ キョウスケ、アオタ ケイスケ、キダ サスケの3人組の事である。
女子から、異世界人達からも白い目で見られている事に気が付いてない。
クラスメイトから少し離れたところで、少年が料理を並べている執事に質問している。
「すみません。この料理に使われている食材、調味料は簡単に手に入る物ですか?」
「そうですね…このお肉はAランクの魔牛のお肉で迷宮の下層まで行かないといけないので、まだ皆様には簡単にはいけないと思います。野菜や調味料は市場で買える物もありますから、比較的手に入りやすいと思います。まぁここで使われているのは質の高い物なので結構な金額になってしまいますが。」
「迷宮と市場で手に入るんですね。わかりました。
教えて下さってありがとうございます。」
「いえいえ。勇者様とお話できた事を自慢できますので、こちらこそありがとうございます。では失礼致します。」
頭を下げた執事は料理を並べ終え下がっていく。ハルキが少年に近づく。
「タツヤはこっちでも変わらないね。もしかしてスキルはそういう系?」
「あ、わかる?
そうだよ。料理人としてはズルかもしれないけど、目利きのスキルとか選んじゃったよ。」
とタツヤはステータスを見せてくれた。
ーー
タキ タツヤ
男 異世界人 16
レベル1
体力42
魔力36
力40
運力8
アイテムボックス、生活魔法
鑑定lv9
火魔法lv4、水魔法lv5
従魔術lv2
目利きlv6、料理lv5、採取lv8、解体lv7
勇者
ーー
「そうかな?元々タツヤは目利きは良かったから別にズルじゃないと思うけど?」
「そう?」
「そうだよ。八百屋さんとかにいつも良い物を選んでるからか、卸業者になって良い物を仕入れてくれとか言われてたし、テレビの鮮度クイズでは全問正解してたじゃん。だからズルじゃないから気にしなくていいと思うよ。」
「わかった。ハルがそう言うなら気にしないよ。ありがとう。」
「どういたまー
こっちでもタツヤの料理が食べれるのは嬉しいな!」
「任せてよ。なんか前よりもっと美味しい料理を作れるような感じがするんだよね!」
「おお!いいね!
あとそれはスキルが反応して、そう感じてるんだと思うよ。」
「へぇ。スキルかー。便利だね。」
「そうだね。あ、そういやー、タツヤのスキルでさ、火、水魔法や採取とかはわかるんだけど、なんで従魔術選んだの?」
「あー。それはね、主人公と犬が協力して鹿とかを狩って、捌いて、一緒に食べている漫画を読んでね、いいなぁって憧れてたんだよね。日本だと難しいじゃん?狩るのもさらに犬と協力してっていうもの。でも、異世界なら出来るんじゃないか?って思って選んじゃった。」
「たしかに、あれは憧れるよね。」
うーん…従魔術か。一緒に強くなっていくのもいいなぁ…
「ねぇ、タツヤ。僕も従魔術を使いたい!後で教えて!使うとこも見せて!」
「うん、いいよ。スキルの使い方とか試す時にでも教えるよ。まぁ、自分もまだわからないけどね。」
「ありがとう!それは僕も同じだから。
あ、僕のステータスはこんな感じだよ。」
「…なにこのスキルの数?隠蔽、偽装、空間魔法だけでも9枠使うのに…」
タツヤには隠蔽してない状態のステータスを見せた。混乱しているタツヤに神様のとこであったやりとりを説明する。
「で、タツヤ以外の人にはこんな感じに隠蔽してるから。」
ーー
レベル1
体力32
魔力38
力25
運力10
アイテムボックス、生活魔法
【隠蔽lv9、偽装lv7】
【護身術lv1】
【火魔法lv1】、水魔法lv1、土魔法lv1、空間魔法lv1
料理lv1
暗視、魔力感知lv1、【害意感知lv1】、魔力自然回復上昇(微)lv1
毒耐性lv1、麻痺耐性lv1
勇者
ーー
「…うん…これなら問題ないね。よくそんな事を思いついたね。」
「スキルレベルが1でいいと思ったのは少しずつ出来るようになるのが好きだからね。あといっぱい欲しいスキルがあったから、試しに言ってみたら、OKもらえたからね。良い神様で良かったよ。」
「あーそれで全部レベル1なのね。納得。ハルはレベル上げ作業が好きだもんね。」
「育ててる感があるし愛着が湧くしね。最初は弱かったのに最後にはこいつ強くなったなーって達成感?みたいなのがあって好きなんだよ。」
「パ◯プロでオールAにするような達成感ならわかるよ?」
「うーん…そんな感じかな…?」
それから暫くくだらない話をしながら美味しい料理を食べて(お皿に装った料理や飲み物をこっそりアイテムボックスに収納して)たら、
「はーるぅ、たつあー、このジュース飲んだぁ?すっごくぅ美味しぃよぉー。」
飲み物2つを持ってきた少し顔が赤くなってる女子が近づいてきた。
「げっ!」
「はるー!いまぁ、げっ!ってぇ言ったでしょお。せっくぅ美味しぃジュース持ってきてあげたのにぃ。はるにはあげなーい。
はい!たつや、これ美味しいよぉ。」
「ありがとう。ナツキ。うん…美味しいワインだね…」
ごくん。
「うん!やっぱり美味しぃねぇ。
美味しぃよぉ?飲みたぃ?ねぇ?飲みたぃ?」
ナツキが目の前でワインを見せびらかす。
「飲みたいから、貰うね。」
少しイラッときてナツキからワインを奪い一気に飲む。
「あ…」
さらに赤くなるナツキ。
「うん。美味しいね。ナツキ持ってきてくれてありがとう。」
「あ、う、うん…どういたしまして…」
「タツヤ、これアルコール入ってるよね?」
「…これワインだから、当然入ってるよね。こっちでは15歳で成人みたいで、自分達16歳になってるから出したんじゃないかな。」
「甘酒でも酔うのにワインなんか飲んだら、こうなる訳だね…」
顔を赤くしてもじもじしているナツキに
「ナツキ大丈夫?トイレ?」
「っばか!」
バチンっ!
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