帰りたーい、帰りたーい。
「ハンナさんからの呼び出し?」
「うん、なんでか知らないけど僕に。だから今日は彼女の所に行ってくるよ。」
数日後。
やることがないのでまたカミュさん達の所へ行こうかと考えていると、レイル君が小さなメモを持ってやってきた。
何故か彼1人をご指名らしい。まぁレイル君なら何かあっても対処出来るから問題ないけど。
「ロシュロール殿下は?」
「今日はあの2人の調査をするみたいだよ。」
既に行動しているらしくその姿はなかったが、この前の私の話を覚えていたのか。カミュさん達が引き抜けたら嬉しいけど。
「特に何も無いと思うけど、気を付けてね。」
「うん、行ってくるよ。」
「うわ、カミュさん。これは失敗ですよ。」
「んー、これは使い物にならないから破棄だな。」
2人の小屋にお邪魔した私は研究の様子を静かに眺めていた。ビーカーのようなものに入れられたコーヒーを啜り、前世に暇つぶしでやっていた女性向け恋愛アプリゲームのイケメンキャラを思い出す。よく高校教師キャラとかでビーカーにコーヒー入れてる絵あったよなぁ。
「…サラ様、そんなに見られると…。」
「ん?あぁ、気にせず続けてください。」
そうは言ってもやはり視線が気になるのか、2人はキリの良い所まで進めた所で休憩をすることにしたらしい。
私と完全に気配を消していたメロの向かいに椅子を持ってきて寛ぎ始めた。
「それにしても、サラ様の冷害対策は凄いですね。一応研究棟にも報告が上がってくるんですが、7割程は回復したようですよ。」
「それは良かったです。」
そこまで回復してるならそろそろ帰れるんじゃなかろうか。でもロシュロール殿下達がまだ動いているってことはまだ何か片付けなきゃいけないこともあるのだろう。何も手伝うことが出来ないのが凄く申し訳ないが、下手に動いて逆にトラブルを引き起こすこともありそうなのでこのままフラフラさせてもらう。
レイル君がハンナさんに呼ばれた理由も分からないし。
「お二人から見て、ハンナ様はどのような方ですか?」
「ハンナさんですか?うーん…、同じ平民出身として誇りに思いますよ。研究にかける情熱は半端ないですし。」
「そうだなぁ…。たまに怖いとこあるけど。」
空になったビーカーもどきを受け取りながらメロの質問に答えてくれるパーシルさんと、背もたれに寄りかかり何かを思い出すように呟くカミュさん。
「怖い?スパルタなんですか?」
「いや、そうじゃなくて。なんて言ったらいいんだろ…。あまり顔を合わせることはないんですけど、こう、ふとした時にどす黒いオーラ纏ってるから…。」
魔族同士がお互いの魔力の色が見えるのと似た感じで、カミュさんは他人の纏う空気が見えるという。
どす黒い、ねぇ…。
今頃彼女を訪れている彼が少し心配になってきた。




