【???side】暴走姫は利用される
更新遅くなって大変申し訳ございません。
「ねぇハンナ。貴女にしか相談出来ないことなのだけども。」
「何でしょうか?」
お気に入りの中庭でいつものようにハンナとのお茶会を楽しんでいた終盤。少しだけ緊張を含んだ私の声に向かい側の彼女は不思議そうな目を向けてくる。
「サラ様を行動不能することって出来ないかしら?」
「ミリア殿下…?何を…?」
「あ!別に何か粗相をしてるとかじゃなくてね!?」
自分の語彙力の無さに絶望しつつ、ハンナに身振り手振りで説明をする。
冷害もほぼ解決した今、彼女達は一刻も早く帰りたいだろう。だがお父様達の様子を見るに何かと口実を作って留め、その間にお兄様が懐柔する気満々である。サラ様と一緒に国を出たい私としては、彼等がやらかして出国する理由が出来る前に自分が彼女にやらかして、人質として一緒に連れて行ってもらいたい。
その旨を伝えると、ハンナは溜息を1つ。
「それで私に薬を作れと?サラ様達が承諾するでしょうか?」
「本当にちょっと手先が麻痺する程度でいいのよ。彼女達にはちゃんと説明してスムーズに事が運ぶようにするわ。」
陛下達も招待したお茶会で紅茶に混ぜる。軽く痺れた手がカップを落として…な展開を期待したい。
「別にそれなら彼女達に演技してもらえばよろしいのでは?」
「騙すのはお父様達よ?もしかしたらその場で毒の混入を確認するかもしれないじゃない。」
「まぁ、それはありますが…。」
万が一嘘だと発覚したら、それを逆手に取られる可能性もある。無理があるかと思われるが、それだけ彼等は本物の魔術師に固執しているのだ。
「ただ、責任を取って殿下だけ処罰されて彼女達は回復するまで保護される、ということもありますよ?」
「そこは…上手くやってもらうしかないけども…。」
穴だらけな計画なのは分かっているけども、何としてでもこの国から出たい私にはこれしかない。
縋るようにハンナを見つめれば、また溜息をつかれた。
「…わかりました。ただ薬を作成した私も同じように処罰されるのは確実ですので、殿下と共に出国させてください。」
「構わないわ。寧ろ一緒だと心強いし。」
「それと、彼女達への説明は私がします。殿下があまり接触して王太子殿下を刺激するのも良くないので。」
確かに、私との時間が取れるなら自分もと言い出しそうだ。お兄様はサラ様を訪問しても高確率で追い出さてるみたいだし。
「分かったわ。お願いするわね。」
話が纏まった私は満足して残りの紅茶を行儀悪く呷って飲み干す。
カップで遮られた視界の向こう、ハンナが歪に笑っていたのに気付かずに。




