まだ帰れないらしい。
「へぇ。そんな所に研究棟の人間が。」
「魔法陣の研究って面白そうだね。僕も帰ったらやってみようかな。」
「爆発させな、いや、レイル君なら上手くやれそうな気がするわ。」
その夜。
情報収集から帰ってきたレイル君達に部屋に集合してもらい、報告会をする。勿論殿下が防音をかけてるのでやりたい放題だ。
「魔族は魔法陣を使わないのですか?」
「まぁ転移くらいなら子供でも出来るからね。その点人間は魔素を使いこなせないと暴発するから必要なんだろうね。」
優雅に抹茶を堪能している殿下は他国にいるとは思えない程リラックスしている。彼の害となりそうなものはメドニエには存在しないようだ。
隣のレイル君はポケットから取り出したメモに魔法陣を描き始めている。メロが所々ミスを指摘しているが、貴女魔法陣まで覚えているの?優秀すぎない?
「こちらはまぁそれくらいしか報告する事がないですね。彼等がメドニエの人間じゃなければ勧誘したい所なのですが。」
「そればかりは二人の身辺を調査してみないと難しいかと。」
最もな返しをされてしまったので、黙って大福を詰め込む。魔法陣が大量生産出来るなら、電車とか引き上げて、空いた土地を別の用途に使えると思ったのだが。またアップデートで魔力取られたくないし。
「あ、そうだ。忘れてたのですが、アルテナに帰ったらすぐに結婚式があるので各々準備しておいてください。」
「え?サラ…遂に僕と…?」
「違います。カイル様のとトゥコーテンさんのです。」
レイル君の期待に満ちた瞳をバッサリ切り捨てる。彼はもう結婚出来る年齢だけど、私まだ14だから。この世界、16からしか結婚出来ないから。
先日の報告書(トゥコーテンさんの救難信号つき)と夕方にきたものを合わせて男性陣に渡す。表情が正反対でなかなか面白い。
「先生が義姉…?いや、兄さん何してるの…。」
「あっはっは!これはめでたいじゃないか!」
「そういうことなので。カイル様は一刻も早く式を挙げたいそうなのでさっさと片付けたい所ですが。」
項垂れたレイル君は放置し、殿下に報告を促す。
「概ね順調に冷害は抑えられているようだよ。被害の大きい所では成果が微妙だが、まったくというわけではないし。コレなら現地に出向く必要はないだろうね。」
「それは良かったです。その分長期になるのは御免被りたいので。」
「ただやはり王家的にはサラ殿を囲いたいみたいで何とかしようと画策してるけど、ミリア王女が暴走していて今はそっちを優先しているようだ。」
簡潔に言うと、自分がアルテナに嫁げば私と繋がりは出来るのだからそれでいいやん?みたいなワガママを言っているらしい。きっと本音は「王女辞めたい」なんだろうけど。
「彼女が嫁いで来たところでこちらにメリットはないですね。」
「まぁ狙われてるのはロシュロール殿下みたいなんで、ファイトです。」
まったく、いつになったら帰れるのやら。




