可能性は無限大。
「現在唯一成功したのはこれくらいですね…。」
そう言ってカミュさんが見せてくれたのは物凄くシンプルな魔法陣だった。陣自体がコンパクトになっていて、確かにこのくらいなら使う魔力も少量で済みそうだ。
用途を問えば天井の隅に設置されているのを見せてくれる。まったく想像もつかないので彼に視線を戻すと、パーシルさんが不意に手元の紅茶を服に零した。その状態のまま陣の下に行けば、淡く輝き服が元通り。
「浄化の魔法?」
「簡略化しすぎでちょっとした汚れを綺麗にすることしか出来ないですが…。」
浄化の魔法は回復の魔法に似たようなものだった気がする。被る部分が多いので使う人間があまりいないから詳しいことは本で調べるしかないのだけど。軽度の呪いを解呪するのに浄化の魔法が必要なことが一番有名だろうか。ゾンデルさんの部下の時は使える人間がいなかったし、そもそもレベルが高すぎたせいで使っても意味なかったんだけど。
「アルテナには浄化が使える者がいないので初めて見ましたね。」
「そうなんですか?…確かに、回復と被りますから好んで習得する人は少なそうですけど。」
どうやら浄化が使えるのはパーシルさんの方らしい。聞けば、家系がそうなのだとか。
この魔法陣には、魔族との戦争時代にアンデッド系の魔物に使用していたホーリー(前世よく聞いていた呪文だな)を簡略化しすぎたものらしい。汚れを落とすことしか出来ないといえども、魔法陣の作成に成功しているのだから充分凄いと思うけど。
「サラ様はどんな魔法を?」
「サラ様の力は強すぎて加減が出来ませんので披露するのは不可能ですね。」
カミュさんの質問はメロがぶった斬ってくれたけども、ハードル上げられても困るんだが。
案の定キラキラした目で見つめてくる二人にとてつもない罪悪感を感じる。彼等は純粋に研究に取り組んでいて、王家の影がチラつくとかが無さそうだから。
「アルテナでは魔法使ってますよね?うわぁ…行ってみたい…見てみたい…。」
「隅から隅まで観察してみたい…。もしかしたら、魔法陣があれば分解して研究出来るかも…。」
いや、分解しちゃったら元に戻せないでしょうが。というか、既存のものはバラせるのね初耳。魔法が関わるものはあらゆる可能性を秘めているのか?
「アルテナは現在、ヤシュカとの交易以外で他国の者が入るのは許可していないので。いつか真の平和が訪れたらお招きいたしますね。」
死亡エンドを回避出来るのが何時になるか、まったく分からないけども。




