研究…?
「パーシィ!またココやらかしてるぞ!」
「え?わわっ!すいません!」
ミリア殿下が部屋に突撃してきた翌日。
レイル君と殿下は引き続きあらゆる魔法を駆使して情報収集に奔走しているのに対し、私とメロは城内を散策していた。流石に何もしていないのも落ち着かなかったので、ジョエル殿下に遭遇しないように気配を探りつつ進んでいく。すれ違う貴族の方からの挨拶を失礼にならない程度に返しつつ辿り着いたのは、中庭というには殺風景な場所だった。
端の方に小さな工房みたいなのがあったので興味本位で覗いてみたら、冒頭の声が聞こえてきたのである。
「はい、今日は4つミスあったー。」
「えぇ!?カミュさん数えてたんですか?」
「暇だったからな。」
開きっぱなしの扉の向こうから聞こえてくるのはとても楽しそうな声だ。ミスということは、何かの仕事中なのだろうか。
「ごめんくださーい。」
「え!?お客さんですか!?って、うわっ!」
「やべぇぞパーシィ!それしまえ!」
とりあえず適当な壁をノックして声をかければ、何かが崩れる音と焦る声。あまりの慌てぶりに少々申し訳なくなるが、折角見つけた暇潰しだしお邪魔させてもらいたい。
「お待たせしましうわっ、凄い黒髪だ。」
「え?」
「馬鹿っ!お前ハンナさんの話聞いてたか!?この方はシュゼールからのお客さんだ!」
現れたのはとても可愛らしい女の人と少々チャラそうな男の人だ。二人ともハンナさんと似たようなローブを着ているので、恐らく魔術研究棟の職員なのだろう。でも何故こんな所にいるのか。棟は正反対の方角にあるのに。
「初めまして。サラと申します。」
「あ、どうも、パーシルです。」
「カミュです。」
先程の会話で名前は把握していたつもりだったが、女の人の方はパーシルなのか。パーシィはあだ名らしい。
「お二人は魔術研究棟の方ですか?こんな所で何を?」
「僕達の研究は棟を破壊することが多々ありまして、ハンナさんが王様達にお願いしてこの場所を借りたんです。」
棟を破壊する研究ってなんぞや。よくこの工房壊れてな…いや、ところどころ焦げてる部分あるぞ。爆発とかするのかしら。二人のローブも端が少しほつれているし。本当に研究?
「そうなんですね。少しお邪魔しても大丈夫ですか?」
「大丈夫ですよ!今日は爆発するようなものはないですし。多分。」
爆発するんかい。しかも多分なんかい。
早くも自分の言ったことに後悔しつつ、二人の後に続いて小屋へ足を踏み入れた。




