斜め上過ぎてついていけない。
「は?…あ、失礼しました。」
「いいのよ。防音魔法かけてるから気にせず話してちょうだい。で、貴女はこの世界のことどこまで知っているの?」
私はね…、と質問してきたくせに自分のことを語り始める王女殿下。
彼女もなんと転生してきた人間で、生まれた時から前世の記憶があったらしい。私と同じでそこまでラノベを読んだりゲームをしていたわけではなかったから此処がどんな世界かも分からず、同士が現れるのをずっと待っていたと。
ちなみに彼女は前世主婦だったそうだ。
マシンガントークが一区切りついたところで、この世界の大まかなストーリーと自分のことも軽く話しておく。勿論、ヒロインのことも。
「なるほど。そもそも私は出てこないキャラなのね。」
「まぁ、そういうことになりますかね。だから正直、もうストーリーなんてあってないようなものだと思うんですよね。」
「確かに。でも、ヒロインがサラちゃんを邪魔に思ってるのは変わりないし、何かしらの強制力は働きそうよね。」
彼女の言う通り、その強制力が一度王太子になった第三王子との婚約という形で発動しているから恐ろしい。
「ヒロインが死ぬのも同じ日本人として避けたいと思うけど、現状サラちゃんに協力するのが妥当かしら。」
「それはありがたいです。」
「ぶっちゃけ、王女とか堅苦しいから辞めたいのよね。アルテナに嫁げそうな男性いないかしら?」
「王女の身分を考えると難しいのでは…?」
ソファをバンバン叩く王女殿下(名前はミリアだそうだ)に苦笑いするしかない。
紹介しようにも王族に釣りあうのなんて、ロシュロール殿下くらいしかいないのでは?彼は王弟ってだけだから、王族から抜ければなんとかなりそうな気もするが…。
「ミリア様は好みのタイプとかあるんですか?」
「うーん…、この世界のイケメンってあんまり好きじゃないんだけど…。あ、サラちゃんの護衛の魔族の人は結構好きかも。」
いや、殿下やんけ。王族やんけ。
とツッコミそうになるのをグッと堪える。いくら好印象を抱かれているといえども、流石にこれは話せない。これがアルテナでの会話なら誓約書なりなんなり書かせて縛ることが出来るが、動きが制限されているこの状態で万が一彼女が喋ってしまったらマズイ。
「はは…。戻ってきたら彼に伝えておきますね…。」
「ありがとう。さて、これ以上喋ってると怪しまれるわよね。また別の機会にしましょう。」
だらけていた彼女は髪の毛を少し整えて姿勢を伸ばす。あっという間に最初の王女殿下に戻ったのを見てこちらも上手く切り替えが出来た。
防音魔法を解く直前の、
「そうだ。一つ忘れていたのだけど。ハンナには気を付けてね。」
不穏な台詞はよろしくなかったけども。




