イケメンの自覚無し。
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「殿下、彼女と面識は?」
「あるわけないだろう?私は基本的に国内の過激派をまとめて管理してるだけだ。この国に来たのなんて条約締結の時くらいだ。」
「ハンナさん、見た目若そうだからその当時生まれていない可能性もありますしね…。」
どうやら現状一目惚れの可能性が一番高そうだ。つい結構な声量で会話してしまった(馬車に乗った時点で殿下が防音の魔法をかけてくれたので外に漏れる心配はない)のを、少し落ち着いてトーンを落とす。
「レイル殿にならともかく、私に一目惚れなんてありえないだろう。」
「いや、僕もありえないでしょう。他国がそこまで黒髪を差別しないと言っても建前だけでしょうし。」
向かい側に座るイケメンの会話ときたら。世の男性が聞いたら舌打ちされるだろう。隣でメロも溜息ついてるし。
とりあえず視線に関しては様子見として、馬車を降りるまでにこれからの流れを確認しておかなければならないので。
「ねぇメロ。陛下に会うのに着替えると思う?」
「そうなると思いますが、そこに関しては衣装諸々全て私の方で準備してありますので心配しないでください。」
自身満々に彼女は言うが、その点の心配というよりドレスが着れるかの心配なのだが。アルテナで生活している間は基本ゆったりしたワンピースばかりだったから、ウエスト周りが…。調整済?それなら安心です。いつ測ったのかは記憶にないのだけど、聞かないでおこう。
「城内では必ず僕達の誰かと行動してください。何かあってもサラが魔法を使うことのないようにしたいからね。」
「特殊な詠唱だからね。ハンナ嬢みたいな研究者の前で使ったら色々厄介になりそうだし。」
「はい、使うとしても詠唱無しでやります。」
ここ数年間暇な時間に学校の練習場を借りて詠唱無しで魔法の練習をしていた成果を見せる時である。残念ながら簡単なものを2、3個発動出来るようになっただけだが。危機的状況から逃走する際の拘束魔法は完璧なので、相手の動きを封じてから余裕で逃げることが可能だ。
「向こうの手紙の通り冷害対策を知りたいだけなのが目的なら一番ラクだが、そうもいかないだろうから油断しないでいてほしい。」
「はい。何事もなく帰れるとは思っていないので。皆さんにはご迷惑をおかけしますがよろしくお願いします。」
徐々に揺れが治まっていく感じから、王都の整備された通りに入ったようなのがなんとなく把握できた。今になって緊張から吐きそうになっていると、前からそっと両手を包まれた。
「大丈夫。僕が絶対守る。だから、帰ったら僕の大事な話聞いてくれる?」
思ったより近くにあったレイル君の顔はとても真剣でちょっとだけときめいてしまったけど。
それ、フラグになりかねない台詞だから。




