纏わりつく視線。
「ようこそメドニエへ。魔術研究棟責任者のハンナと申します。」
「初めまして、城塞都市アルテナ城主のサラです。」
検問所を無事通過した私達を出迎えてくれたのは、膝丈の黒いローブを羽織った少女だった。
「魔術研究…じゃぁ、王女に気に入られてるあの…?」
「王女殿下には良くしていただいております。」
レイル君の呟きが聞こえていたらしい。彼女が平民出身の優秀な魔法使いのようだ。
ぱっと見凄そうには見えないが、外見だけで判断するのは良くない。隣に良い例がいるからね。
殿下とメロは一言も発さず警戒しているようだ。普通はそうするのだろうが、私は知識ゼロなので許してほしい。
「そちらは…?」
「サラ様の護衛のレイです。」
「同じく護衛のローシュです。」
「侍女のメーナと申します。」
今回メドニエを訪問するにあたって最初に決めたことは、それぞれ偽名を使うことだった。私は残念ながら素性が知れてしまってるので使えないが、殿下やレイル君は夜会で暴れたくらいなので情報が回ってないだろうし(数年経っても正妃と第一王子が亡くなった話ばかりで第二王子のレイル君は見事に話題にあがってないらしい)、メロはそもそも貴族ではないので顔が割れていないので。男性陣は念のため魔道具で一部外見を変えているし、バレないでしょう。
「…まさか…。」
「ん?何か?」
「あ、いえ…。魔族の方にお会いする機会などなかなかございませんので少し驚いてしまって…。陛下達がお待ちですので行きましょう。」
殿下を見て表情が険しくなったので早々にバレたと思いきや、返ってきた言葉に安堵する。
外で待機していた馬車に案内してもらい、城へ移動を開始する。ハンナさんは護衛も兼任しているらしく一緒に乗らずに馬で並走している。
「さて、とりあえずは何とかなったけど…。殿下、どうしました?」
「いや…、どうにも気持ち悪いなと。」
「この状況がですか?」
「そもそも何故研究棟の責任者が来るんだ?」
まぁそれはちょっと不思議に思ったけども。普通は騎士団長とかそれなりに偉い人が迎えにくるイメージが前世の知識としてあるので。まぁメドニエではハンナさんの役職は実は物凄い上に位置しているだけかもしれないけど。王女と仲良いみたいだし。
「それと…気持ち悪いって言ったのは彼女の視線だよ。」
「視線?」
「ただ魔族が珍しいだけにしてはおかしいくらい…。」
「横にいた私もそれは思いました。というより、誰と話していても彼女の視線は殿下に熱く向けられていました。」
それは一目惚れというやつでは?




