最初から不安でしかない。
さて、出発当日を迎えたわけだけれども。
「はっはー!こちらのことは任せて行ってくるがいい!」
緑茶ー!と叫んでいなくなったアシュモード陛下はもう知らない。部下の人達が困っているけど、連れてきたヤシュカ側が悪いのでスルーさせてもらう。父が対応するようで慌てて追いかけていったから、不審者には見られないだろう、多分。
「ホントに何しに来たんですかあの方…。」
「やる時はやるから見逃してほしいかな…。」
レイル君がジト目でロシュロール殿下に尋ねれば苦笑いとともにそんな言葉が返ってきた。昨日の話し合いにも参加していなかったトゥコーテンさんは茫然としている。
「魔族の長が出てくるなんて聞いてないわよ…。」
「誰も聞いていなかったから安心してください。」
「安心出来るか!…あんたが嫌がると思って言ってなかったけど、私の国の長も面会を希望しているわよ?」
「儂の所もじゃの。」
彼女と理事長さんの言葉に絶句する。二人の国ってエルフと獣人でしょ?シュゼールからだいぶ離れた所に位置しているから耳に入ることはあれど、興味を持たれることはないと思ってたのに。
しかもエルフの方は何代か前の魔女が接触を図ろうとしたけど無理だったって日記に書いていたくらいレア度高いのに?
「あの、それって断っても大丈夫なやつなんですか…?」
「もう断ってあるわよ。気になるなら自分の足で来てくださいって。」
「こっちも断ったがしつこくてのぅ。ゾンデル殿からももしかしたら話を聞くかもしれん。」
偉い人相手に軽く断ってる二人って実は凄い人達なのでは?と恐れつつ感謝する。ゾンデルさんも分かっているだろうから言ってこないかもしれないし。
そんな知りたくもなかった話の間に準備が出来たようで。
現在の場所は正門の倉庫。転移用の魔法陣が大量にあるあの部屋だ。悪用されても困るので、倉庫扱いにして普段は入れないようになっている。
「メドニエに近い領って何処ですか?」
「側妃の実家がある所だったはずよ。国境に近い所っぽいから大丈夫だと思うけど、気を付けてね。」
「はい。ありがとうございます。万が一何かあっても、レイル君とロシュロール殿下は絶対に生きて帰るように尽くしますので。」
「いや、それ間違ってるから。」
カイル様がツッコミ入れてくるが、母親目の前にして息子をないがしろにするわけにもいかないでしょうが。殿下に関しては何かあったら本当に国際問題になってしまうし。
「サラちゃんもメロちゃんも無事で帰ってくるのよ!」
「私はいいのです。サラ様は確実に無傷の状態で戻ってまいります。」
黙っていたメロが割と本気で言ってるけど、ちゃんと全員で帰ってくるから。そんな命の危険もないと思うし。多分。
「では、留守を頼みます。…と父達に伝えておいてください。」
「わかったわ。」




