【???side】父、脅迫される
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「そんなことがあったとは…。」
「えぇ。なので、ヤシュカの使者が早くて明日こちらを訪れると思います。サラにはレイルと共にメドニエの勉強をしてもらいたいので、俺達で出来る所は進めていきたいのです。」
数時間前に仕事を終えて帰ったはずのカイル殿が戻ってきたと思えば何故かフィオナ様(どうしても様がとれない)が一緒で、二人とも深刻な顔をしていたので話を聞けば、まぁまた厄介なことになっていると溜息しか出ない。
サラから役所の責任者を任せると言われてから建物の端から端まで駆け回って既に疲労困憊だというのに、娘はどうにもトラブルを引き寄せるらしい。彼女が好んでやっていることではないが。だからこそ、現在に至るまでアルテナの外に出ないのだろう。
「で、向こうの目的は把握できているのか?私は外交はめっきりなんだが…。」
「金庫番は財務部に引き籠りだったものねぇ。まぁ、そのおかげで財政が傾くことはなかったけども。」
「表向きは冷害対策。本命はサラの囲い込み。」
「そんなことしたらレイルが暴走するので何としてでも阻止したいのよね。」
フィオナ様の言葉に更に溜息が出た。
レイル殿は命の恩人であるらしいサラに執着している節がある。現時点でどこにも被害はないので放置でいいだろうと思っているのだが、万が一メドニエがやらかしたら暴走必至だろう。彼なら国一つ滅ぼしかねない。国際問題は今のアルテナでは捌ききれないので回避したいところではあるが。
「レイル殿の執着は…。」
「あれは初恋だからねぇ…。拗らせてるわ。」
「サラがまったく気付いていないから余計に…。」
唯一なんとか出来そうな娘に彼の想いは届いていないようだ。
「失礼します。レイル殿がいらっしゃったのでお連れしました。」
噂をすれば。
サラと一緒に学校に置いてきたらしいレイル殿がやってきたようだ。幽閉されていたと聞いていたからさぞ陰湿な少年になってしまっただろうと当初は心配していたが、胸を張って堂々としている姿に安心したのを覚えている。これもサラのおかげなのだろう。
「お話中すいません。」
「大丈夫よ。折角サラちゃんと二人にしてあげたのに、また逃げられたの?」
頭を下げる彼に母親であるフィオナ様がニヤニヤとしている。いや、親のする顔ではないだろうに。
「彼女の家でメドニエでの打ち合わせをしようと思ったのですが断られてしまったので…。」
「あぁ…。あの家、な。」
サラの家。
こちらに移り住む際に一緒に住むことを提案したら断られ、自宅への立ち入りも禁止だと言われたのを思い出す。妙な佇まいの家は見たこともないもので容易く侵入出来そうなものなのだが、誰も突破したことないらしい。
そもそもそんなことを考える住民なんて目の前でしょぼくれている彼以外いないだろうが。
「…オズマン侯爵。メドニエにサラが盗られるのは嫌ですよね?」
「ん?まぁ、それはな。娘には自分の好きなように生きて欲しいとは思っているから…。あの子の意思でない限り賛成はしないよ。」
「じゃぁ侯爵、サラを僕にください。いいでしょう?」
私の言葉は通じていなかったらしい。どうやら外堀から埋めることにした彼はキラキラな笑顔向けてくるが、圧が凄い。こんなことに元王族のオーラを使わないで欲しい、脅迫である。
サラ、頑張ってくれ。父さんにはこの少年は止められないと思う。




