なんでこんなにも面倒なんだ。
「やっぱり今後はもう少し強化していかないと駄目だね。」
レイル君の言葉に首を縦に振る。私の最終目標は天寿全うである。その為の壁となるヒロイン撃退はするが、それ以外での争いは勘弁してほしい。もう少し調整すれば父にあとは任せて引き籠ってリーナが仕掛けてくるのを待つだけになるのに。いまだに彼女は何もアクションを起こしてこないが諦めたのだろうか。
いずれにせよメドニエに構っている時間などないのだ。
「実はこちらもメドニエの件で殿下にご相談したいことがありまして先程手紙を飛ばしたところだったんです。いつ頃いらっしゃいますかね?」
「早くて2日後かと。」
「サラ、メドニエの訪問は早くて5日後くらいがいいかもね。」
「そうだね。返事は殿下が来てからでも良さそう」
私達の会話を不思議そうに聞いている商会長に事情を説明すればふむ…と黙りこんでしまった。何か思うことがあるのだろうか。邪魔しては申し訳ないと思い、私もレイル君も黙って緑茶を啜る。
そうしている間にノックの音が響き、交易課の人が殿下からの手紙を持ってきてくれた。いつもより少々崩れた字は急いで書いてくれたのだと分かる。向こうでの調査を部下に任せて一先ずこちらへ急ぎ来てくれるとのこと。そして、ヤシュカの国王にも報告済だと。
商会長にもそれを伝えてまた沈黙が訪れてしまう。
「今日は何も出来そうにありませんね…。」
「そうですね。こちらも今メドニエについて事情を知っていそうな人に確認はとっておりますが…。とりあえず商会長は宿を用意しますので、ゆっくり休んでください。」
レイル君に頼んで商会長を案内してもらう。一人になった私はソファに凭れて溜息が零れた。
この後やるべきことは、入れ違いになるかもしれないが殿下に手紙を返してカイル様とフィオナ様の所に話を聞きに行くことか。父にも話しておかなければ。
「あー…めんどくさ。」
一人の部屋に自分の声がよく響く。手にした緑茶はすっかり冷めていた。
他にも出来ること…、図書館に他国の資料とかあれば目を通してみるのもいいかもしれない。ルーヴさんや理事長さんにメドニエに行ったことあるか聞いてみるのもいい気がする。
あとはやっぱり不穏な事態になった時に護身用アイテムを作って…。魔法の練習もしておくべき?
「よし、手紙出してまずは図書館にしよう。」
図書館で本を探す私の背後にデジャヴよろしくロシュロール殿下が現れるのは、1時間後のことである。




