トゥコーテン様々。
「アンタねぇ…。今日は家から出ない!連絡も寄越すな!って言ってたのはどうしたのよ…。」
「のっぴきならない事情です…うぇ、マズイ…。」
城門とのやりとりを早々に切り上げて、重たい体を引き摺った先は病院。尋常じゃない様子の私を発見した受付のお姉さん達が真っ青になって担架を持ってきたと思ったら、病人を運んでるとは思えないスピードで診察室に運ばれた。
朝イチ引き篭もり宣言した私が目の前に現れたことに驚いていたトゥコーテンさんは、私の様子に目を輝かせて嬉々として薬品棚を漁り始めた。
それを担架酔いで更にダメージを喰らった私はただ見てることしか出来ず、お姉さんに手伝ってもらいベッドの背もたれに寄りかからせてもらう。
数分もしないうちに目の前に出された小さな瓶。中身は少し青みがかっていて無臭のようだ。
魔力用の回復薬だとトゥコーテンさんにそのまま渡され、飲むしかなくなったので口をつける。恐ろしい色や匂いの薬品達を過去見てきていたので躊躇いもあったが、思考力が低下した私は普通の色に無臭というだけで安心してしまい。
「……っっっっっっ!?」
あまりの苦さに悶絶したのである。
水を求めて手を伸ばしたのに何故かトゥコーテンさんにソレを包むように握られ効き目を散々聞かれ。
先程ようやく落ち着いたのである。
「で?少しは元気になったかしら?」
「オカゲサマデ。」
「サラが動かなきゃいけない緊急事態でも起きたの?レイルが学校休んで役所でルーヴと仕事してるから問題なさそうだけど。」
どうやらルーヴさんのいる日だったらしい。レイル君が暴走しない為にもう少し一緒にいてもらおう。
「メロが…侯爵家にいた時にお世話になった侍女が来てくれたんです。」
「あら、噂の?」
「父が連れてきたみたいで。どうしても会いたくて…。」
画面の向こうの彼女は父の隣で顔を伏せていたのでどんな気持ちで彼処に立っていたかは分からないけど、やっと会えると思ったらいてもたってもいられなくて。
取り急ぎ役所で会う約束をして家を飛び出してきたのだ。
「ここでのんびりしてていいの?」
「まだ手続きが済んでなかったので、それから電車に乗ったとしてもこちらの駅に到着するのはもう少し後です。」
「そう。なら少しでも休んでいきなさい。」
彼女を心配させたくないでしょう?と横になることを奨めてくるトゥコーテンさんはちゃんとした医者だった。散々心の中で酷いこと言ってごめんなさい。
結果爆睡して、約束の時間には間に合わなくなったのだけども。




