それは心の底から望んだモノ。
魔力枯渇により体調を崩した私は翌日外に出ることが出来ず。
しかしあまりにも様変わりした街並みに驚いた役所の人間からの連絡が絶えない。最初に寄越してきたのはトゥコーテンさんだが、
「アンタなんてことしてくれてんの!?最高すぎるわ!!」
と狂喜乱舞していたので一安心。病室を上に繰り上げて下の階を薬品置き場にするなんて言葉聞いてない。実験がーなんて楽しそうにしていた彼女の声はきっと私の幻聴だ。
次に寄越してきたのはレイル君だった。
心配はしてくれているのだが、やたら看病しに行くと連呼していた。これは住み始めた当初から「家に遊びに行きたい」と言い続けている彼を頑なに拒んでいるからだろう。これをチャンスと思っているらしい。看病の申し出はとても嬉しかったが、家の中を見られるわけにはいかないので却下。
「中の様子は見てもらえましたか?」
「はい、問題なさそうです。既にそちらへ引っ越したいと希望者が出ているので、午後から順次手続きしていきたいと思ってます。」
「ありがとうございます。父にも一度確認してもらいたいので、連絡しておいてください。」
「わかりました。サラ様がご案内なさりますか?」
「もし今日中に来るのであれば、申し訳ないけど誰か別の人にお願いしてもいいですか?明日以降なら回復していると思うから私でも大丈夫です。」
翌日には整ってると言ってあるから今日もこっちへ来る準備は出来ていると思うけど。スマホがあれば写真撮って送れば済む事なのに。作成しようにも膨大な量だし、管理するのも面倒だし。
「ではゆっくりお休みください。」
「ご迷惑おかけして申し訳ないです…。」
「とんでもございません!サラ様はいつも私達の為に働いてくれていますから。」
そのままお大事にと言われて監視室からの映像が落とされた。確かに私、物凄く働いてる。だって魔力枯渇するくらいだもん(これが初めてだが)。
そもそも枯渇するなんて資料何処にもなかった気がするんだが。それだけ私の保持出来る魔力量が少ないのだろうか。まぁ日記に書いておけばそれも次代が活用してくれるだろう。
「それにしても、思ってた以上にあの子は何もしてこないのね…。」
今まではストーリー前ということもあったからそこまで派手な動きは見せないと思っていたけれど。始まった今、姉はどう動くのだろうか。
「どう動かれようと揺るがない環境を整えないと。」
次代の為に遺していく物を考えつつも、私で最後にしたいという思いはずっと胸にある。下準備も概ね順調であるし、まだ頑張らないと。
「あれ?ゾンデルさん?」
スマホが震えたと思ったら正門からの呼び出しだ。私が体調崩しているのを分かっていてのコレは緊急事態とみるべきか。
一度キッチンへお湯を沸かしに行き、テレビのチャンネルを役所から城門に切り替える。
少し乱れた後に映されたのは、
「メロ…?」
ゾンデルさんとその後ろ。
訪問に来たであろう父と、気まずそうに横に控える彼女だった、




