事前の説明って大事。
住民への説明は専用の冊子を作成して各家庭に配ってくれるらしいので、そのまま役所に丸投げして。
夕飯を早々にすませて箱庭部屋へ。本日のデザートであるマンゴープリン片手に、どうしたものかと考えを巡らせる。
住民が増えるのは良いとして、これ以上住宅街エリアを拡張するのは正直気が進まない。
「となると、マンション造らないとなのかなぁ…。」
景観ぶち壊しになってしまうがそれしか方法がない気がする。もしかしたら他にもあるのかもしれないけど、残念ながら私の知識ではこれが限界である。
ただそうなってくると、
「この家の外観も変えないとか?」
高層マンション建ち並ぶ中心にあるちっちゃい民家が城主の家とか少し悲しい。
とりあえずマンションのミニチュアを作成して、まだ空き家になっていた場所と入れ替え配置し、畑エリアを少し拡張する。父から人数の報告が上がり次第、畑も区画整理して全員分用意しないと。
「というか、父が引っ越してくるなら全部任せてしまえばいいのでは?」
空になったプリンの容器片手にボソリ。
そうだ、そうすれば少なくとも役所の仕事はやらずに済むじゃないか!
これは!1日も早く!こちらに来てもらわないと!
その後の作業スピードは言うまでもない。
自宅の外観をこれでもかと高い塔に変更し、住宅街エリアに可能な限りマンションを置いていく。こうなってくると城壁も少し高くした方がいいだろう。病院も縦に伸ばして受け入れられる数を…。
なんて調子に乗ってたのがいけなかったのか、箱庭に触れようとした手が突如弾かれる。
特に痛みはなかったが、驚いて咥えていたスプーンがあらぬ方向に飛んでいってしまった。
「え?何?やらかした?」
ソレを拾ってとりあえずテーブルに置き箱庭に視線を戻せば、青白い光に包まれている。どうしたらいいのか分からずそのまま棒立ちしてると、手前に小さなスクリーンが浮かび上がってきた。
「『箱庭の容量がいっぱいです。アップデートしますか?』。……んなアホな…。」
この世界に合わなすぎなその文章に脱力。
だがやはり上限はあったようだ。この段階で気付けて良かった気もする。
アップデート可能ということは、上限突破が出来るのか。それもありがたい。市場エリアも住民の数に合わせて拡張したかったからラッキーだ。
表示された選択肢の"はい"にそっと触れてみる。
途端、体から何かがゴッソリ抜けた感覚に立っていられなくなり尻もちをついてしまった。
「え?何?なんか凄くしんどい…。」
腕を使って上半身を持ち上げ、先程のスクリーンに顔を近付けてみると。
『アップデートが完了しました。魔力の提供ありがとうございます。』
それ、先に説明しておいてよ。




