大規模な引っ越し。
「オズマン領全員の受け入れですか?残る領地はどうなるのです?」
「王家が好き勝手やるだろう。私達のワガママで領民を振り回すことになってしまうから…。他領も受け入れてくれないだろうから、此処しかないんだ。」
「まぁ此処はあくまでオズマン領ですけど…。」
箱庭をいじれば受け入れは問題ない。しかし、だいぶ拡張しているから最近は上限があるのではとヒヤヒヤしている。今も住民の受け入れは少ないが続いているのだ。
まぁ父の頼みを断るのも苦しいので、住宅街エリアの大規模工事(という名のミニチュア移動)をするしかない。
「分かりました。少し時間はかかりますが受け入れましょう。」
「助かる。可能な限り時間稼ぎはする。」
「ありがとうございます。ちなみに、母達は?」
「王都のタウンハウスに最低限の従者と共に既に移住させてある。此処に住む気満々だったが「無理です。」…と思ったからな。」
前のめりな拒絶に父は苦笑いだがこちらは真剣である。散々酷い扱いをされて養ってやろうなんて思うわけないだろう。
リーナにいたってはアルテナにいればレイル君か第三王子と結婚出来るかもなんて思っていそうだ。カイル君(こちらも様呼びをしたら君呼びでお願いされた)は一応死んだことになっているし。
「リーナを薦めてみては?彼女なら喜んでなると思いますが。」
「リーナで我慢してもらえなければ、オズマンがアルテナとして国から独立すると脅迫すれば…。」
「父様、一応相手は王族です。」
オブラートに包むのすら面倒らしい父は知らん顔で緑茶を啜っている。最初は味に抵抗があったみたいなのに、最近じゃ紅茶を淹れようとすると緑茶を希望されるほどだ。
「それでは、その脅迫をするのは1週間後にしてください。催促されても交渉中だと。」
「そんなに短い期間で大丈夫なのか?」
「住居に関しては明日には完成しますので。住民の引っ越しを3日かけて終わらせるので、その間に領民に説明しておいてください。4日目から順次受け入れます。前日までにおおよその人数を教えていただけるとありがたいです。」
「分かった。」
そうとなれば善は急げ。
挨拶もそこそこに部屋を出ていった父を見送ったあと、私もすぐに役所の各部署に緊急会議だと召集をかける。話を聞いた彼等は皆綺麗に緑茶を吹き出したけども反対はせず、その日のうちに大規模お引越し計画は各家庭の耳に入ったのである。




