これが強制力?
自国の正妃と第一王子が身分を捨てるという暴挙は勿論私達しか知らないので、王都の方はそれはそれは混乱したとゲッソリした父が言っていた。
「頼む、事前に教えておいてくれ…。」と懇願されたが、この件に関しては私もノータッチだったこと、主犯はフィオナ様達だということを言えば、父は気絶した。トゥコーテンさんが介抱すると言っていたが大丈夫だろう。楽しそうにしてたなんて知らない。見てない。
当事者達はあっという間にアルテナに馴染んで、今はレイル君と3人で仲良く暮らしている。今まで与えられなかった分の愛情たっぷりなスキンシップに戸惑っている彼を見て微笑ましいと生温い視線を送ったものだ。
その後はたいした騒動もなく、地味に増え続ける住民の為に箱庭で整備をし引き籠もり、役所の仕事を見て引き籠もり、ヤシュカとの交易の継続をお願いして引き籠もり。
なかなかな自堕落ライフを続けて数年が経とうという時にそれはやってきた。
「第三王子との婚約?」
父が定期的に訪れて色々報告をしてくれていた。
現在のシュゼールはヤシュカが平和条約を結んだ国に流した噂によって大陸から孤立しつつある。これは殿下自身からお聞きしたので確かだ。
初めは距離をあける他国に意味が分からなかったそうだが、最近になってヤシュカの仕業と気付いたらしい。
元々軽蔑していた魔族への怒りが爆発しそうで、戦争の話も出ているとか。
「魔族に戦を仕掛けるのに、シュゼールは軍事力の補強で魔術師を再び集めたいそうだ。」
「私に王子の婚約者になってもらい、アルテナにいる他の魔術師を利用したいと。」
状況や相手は違えど、ここにきて物語の強制力が働いたようだ。今私の年齢は14歳、リーナは18歳。原作が始まっても不思議じゃない。このままその座におさまれば、大人しくしている(本人はそのつもり)リーナが黙っていないだろう。奪い取って何とか私を破滅させる方向に持っていきたいはずだ。
「お断りですね。」
「だよな。」
私の即決に父も頷く。
別に第三王子が悪いわけじゃない。彼は第一王子が亡くなったとされた後、残されたただ一人の王位継承者として勉学に励み、国の立場が悪くなる中外交にも携わっているとか。
フィオナさん(身分放り出したから様付けはやめろと脅ーお願いされた)も「あの側妃の息子とは思えないくらい優秀ね」と褒めていた。まぁ、今や正妃なのだが。
「お断りした場合、王家はどう出るのでしょうか。」
「オズマンの裏切りと見なして潰しにかかるだろうな。どう頑張っても此処は無理だろうが。」
父の言葉にどうしたものかと腕を組む。
ぶっちゃけてしまえば、父やメロ以外のオズマン領民に関してはどうでもいい。母やリーナもだ。寧ろその2人は逆に差し出したい。
しかし父の手前それは言いにくい。
「サラ、領主たる私がこんなことを頼むのは情けない話なのだが。」
「何でしょうか?」
「オズマンの民をアルテナで受け入れてくれないだろうか?」
また随分なお願いである。
 




