うっかりにもほどがある。
ブックマーク増えてましたね。本当にありがとうございます。中途半端なところで切ってしまってるので、次回は出来るだけ早めに更新したいです…。
「申し訳ございません…。」
「いや、まぁ、気にしてないんで…。」
ガタンゴトン。
来た時よりは乗客の多い電車の中、隅の席で向かい合った私達の気まずさといったら。
模様が見当たらないことに疑問を持ったものの、そういえばトゥコーテンさんが確認の為に手を翳している作業があったなと思い出した私は急に恥ずかしくなってゾンデルさんから距離をとった。
なにやってるんだ私は!と悶絶したくなるのを心の中だけに留め、動けないゾンデルさんを浮遊魔法で電車まで運び現在に至る。
猛毒ではないが体の自由を奪うくらいの毒なので意識を失うことなく会話出来ているわけだが。
どうせなら意識と共にさっきの出来事の記憶も飛ばして欲しかったとも思う。
「それで?何故あんなことを?」
「既に捕縛している方達の身体検査をしたのですが、呪いの反応がありましたので。」
「呪いだと!?」
おや、ゾンデルさんの反応からするに、もしかして彼は呪いを受けてはいないのだろうか?
「もしかして、ゾンデルさんは呪いを受けてないのですか?」
「勿論だ。どの国でもその類いは禁忌となっているはずだ。術者は漏れなく重罪に科せられる。」
「…今病院で拘束している3人はそれぞれ呪いによる模様が浮かび上がってます。現在うちの医師とヤシュカの王族の方が診ています。ゾンデルさん達も受けていると思って様子を見たきたのですが…。」
「少なくとも俺は受けていない。術者の特定も進んでいるのか?」
ヤシュカだけでなくこの国を含めた他国も呪いに関しては禁止されているらしい。そんなものを側妃様が使っていると言っていいものだろうか。
そしてゾンデルさん、口調が完全に素に戻ってますよ。
「それは…。恐らく側妃様かと私達は推測しております…。」
「っ!クソ、あの女…!」
目の前の顔が人1人殺せそうなくらい恐ろしいことになってます。毒のおかげで動けないけど、そうでなければ椅子とか破壊されていたかもしれない。
それにしても、側妃様をあの女と呼んでしまうあたり元々仲は良くなかったのだろう。慕っていたら、可能性でも私が名前を上げたことで不敬罪と言われそうだし。
「まだ仮定の話なので本当に側妃様かは分かりませんが。分かっていることは、術に術者の何かが使われていて解呪するのに難しいこと。その代わり綻びは生まれやすくて、そこを突いて緩和剤を使って何か情報をいただけないかと…。」
「なるほど。もう1人はどうしている?」
「市場のほうで甘味をいただいている所までは確認させたいただいております。医師は全員呪いを受けていると思って早めの回収を訴えておりました。」
もう1人の彼は誰かが事情を説明しに行っただろうか。動けるとしたらレイル君ぐらいだろうか。ルーヴさんは合流しているだろうけど、彼女に商い以外の交渉をさせるのもなかなか難しく思えるし。
「ひとまず様子をしっかり確認したい。申し訳ないが、このまま移動をお願いしてもいいだろうか?」
「勿論です。」
動けない彼は頭を少しだけ下げて言ってくるが、元々そのつもりだったので何の問題もない。
浮遊魔法で運ばれる姿を見られるのは恥ずかしいかもしれないけど、我慢してもらうしかない。




