元学生に交渉など出来ない。
お久しぶりです。長らく更新出来なくて申し訳ございません。またゆっくりとやっていきたいと思いますのでよろしくお願いします。
ガタンゴトン。
転移魔法を使ってゾンデルさんの所まで行こうとしたが、すぐに準備が出来ることもないだろうと思い電車移動に変更。この時間に城門方面へ向かう住民はほとんどいないので乗客はまばらだ。裏門はヤシュカとの交流で使用されているのでそれなりかもしれないが。
他の呼び出しも無さそうなので、この時間を使って色々考えてみる。
ストーリー開始までまだ時間があるので断定は出来ないが、シナリオより大幅にズレたと思っている。ここから何かしらの強制力が働いたとしても、アルテナにいる限り安全だろう。
だいぶ賑わってきたし、住民を増やす頻度を下げて箱庭をいじりながら引き籠もる時間を確保してもいいかもしれない。
ぶっちゃけ管理も面倒だし。
『次はー耕作地帯ー』
最近魔法に頼ってばかりだったから少し運動不足な気がする。ゾンデルさんは現在茶畑に近い所に移動したらしく、ここから電車を乗り換えてそちらへ向かってもいいのだが、折角なので皆の畑の様子も見つつ歩いていこう。
毎朝丁寧に作業してくれているおかけでパッと見冷害の影響を受けているとは思えないそれの間を確認しながら進んでいく。
こうして見ると、放置されている畑もだいぶ減ってきた。この畑が全て使われるようになったら住民を増やす必要はないだろう。
様々な作物の状態を見つつ、線路に沿って歩くこと10分。
もうすぐ茶畑というところで、その後ろ姿を視界に捉えた。
「ゾンデルさん、調子はいかがですか?」
私の声に純粋に驚いたのか、気配を感じなかったことに驚いたのか。振り向いた彼の表情を見るに後者のようだ。
気まずそうに笑う彼はしゃがんでいた体勢からゆっくりと立ち上がると、探るような視線を向けてきた。
「今国内は冷害の影響で作物の値段が高騰しているのはご存知ですかね?」
「ええ、勿論。」
「にもかかわらず、オズマン領にその変化がほとんど見られず、此処も質の低下を見せていない。何か対策でもされているのですか?」
「ええ、勿論。」
腹の探り合いを向こうはするつもりなのだろうが、前世女子大生、そんなもの出来るわけもないので言われたことにイエスかノーかを答えるしかしない。
変に気取ってボロを出すわけにはいかないのだ。
少なくとも彼等をこちらに引き込むまでは。
「………。私どもの街も被害を受けておりまして。是非ともご享受願いたいのですが…。」
「申し訳ございません。それは出来かねます。」
「オズマン侯爵には教えたのに?」
「父ですから。」
「他はどうなってもいいと?」
「えぇ。正直、オズマン領に関してもどうでもいいのです。父がいるから、その点が無ければ教えませんでしたよ。」
ニコニコとただ素直に答えていけば、だんだんと目の前の顔に怒りが混ざってくる。
彼には【国など滅んでも構わない】と大袈裟に捉えられたのだろう。まぁ、自分が死なないならどうなろうが知ったこっちゃないのは事実だが。
「きさっ「『動くな』」っ!?」
「あぁ、つい魔法使っちゃいましたけど、毒の方が先に発動しましたか。」
隠し持っていた短刀を抜いた瞬間魔法を使ったが、それと同時に彼は倒れこんだ。リストバンドの発動の速さに舌を巻く。このアイテム、思ってる以上に優秀だ。
うつ伏せの体に近寄ってその服を捲る。
「なっ!?」
「うーん。ないですねぇ。」
ゾンデルさんは焦っているが、私は痴女ではないので誤解しないで欲しい。ただ呪いの模様を確認したかっただけだ。
そこにそれはなかったけども。




