トゥコーテンさん、楽しそうですね。
連休中に少しでもストックしておきたいのになかなか進まない駄目人間です。文章力欲しい。
さて残りはどうしようかと悩んでいた所にトゥコーテンさんのいる病院から呼び出しがあった。さっきの人を何処に運ぶか指定していなかったから、とりあえずそちらに持っていったのだろうか。それとも別の人がやらかしたのか。
「何かありま…って…えぇ…?」
「あ、やっと来たわね。さっき運ばれてきた奴も一緒にしてあるわよー。」
案内された先は普通の病室だった。
だったのだが。
何故身ぐるみ剥がされて下着オンリーな獣人さんがベッドに拘束されているんだ。
「これはどういう状況ですか…?」
「こちらの医療現場を見てみたいって言われたけど、ここって患者ほとんどいないじゃない?それを話したら扱ってる薬品を見たいって言うから棚見せたんだけど。私がおふざけで作った薬があるの忘れてて、それ嗅いで卒倒。」
だからリストバンドの毒で倒れたわけじゃないのよ、とトゥコーテンさんは照れながら言うが。卒倒する程の匂いって、何を混ぜたらそんなものが出来るんですか。
「トゥコーテンさん…。」
「コホン。それはまぁいいとして。どーせボロ出して捕まるんだろうから、折角だし普段出来ない実験をしようかなって。」
「実験…。」
「変な目で見ないでちょうだい。エルフがよく使う薬が必ずしも他の種族にも効くわけじゃないから試したかったのよ。」
至極まっとうなことを言っている彼女だが純粋に実験もしたかったのだろう。横のデスクにはいつ使うのか分からない器材がびっちり置いてあった。同じようにそれを視界に入れたのだろう、獣人さん達は真っ青になって藻掻いている。気持ちは分からなくもない。
「でもそれなら私を緊急用で呼び出す必要ないのでは?どうせ止めたところでトゥコーテンさんはやるでしょう?」
「そりゃ勿論。…これを見てもらいたかったのよ。」
そっとトゥコーテンさんがベッドの方に手をかざすと、2人の体が淡く光り何やら模様が浮かび上がる。その色は血のように赤黒く気味が悪い。
「なんなんですかこれ…。」
「呪いよ。種族によっては魔法で加護が付けられてたりするから、それを間違えて解除したり別の魔法を使って効果が薄れないように、診察の際に必ず確認するのよ。一応今回もそれをしたんだけど、これは完全に呪いね。」
「へぇ…、なんでまた…。」
手を下ろせば模様は消えたがアレはなかなか忘れられそうにない。前世読んだラノベでは、模様が複雑で美しいほど強い効果が出るってよくあったけど。
試しに聞いてみればこの世界も同じようで、トゥコーテンさんは厄介だと舌打ちをした。
「なかなか口を割らないのは喋らないのではなく、喋れないんですね。」
「側妃様が独断でやったのか城ではこれが普通なのか、どっちにしろ反吐が出るね。これは私には解呪出来ないわ。」
レベルが足りない!悔しい!と本気で凹んでる姿は彼女らしいというか。トゥコーテンさんはエルフの中ではなかなか上の方にいると聞いたが、そんな人でも駄目なのか。
この2人に模様が浮かぶということは、残りの3人も同じなのだろう。自分の意思に反して今回乗り込んできたのなら助けてあげたいところだが。
「これ、魔術師が解呪することは出来るんですか?」
「やろうと思えば出来ると思うけど、失敗した時のリスクが高すぎるからやめておきなさい。」
アンタに何かあったらこの街の住民が悲しむわ、と頭を撫でられるのがむず痒い。そんな風に思ってもらえてるのであれば自分の為とはいえ嬉しい。
「ロシュロール殿下に連絡とりましょ。呪い系に関しては魔族の方が詳しいわ。」
「じゃぁ役所に行って手紙出してきます。そのまま図書館でその手の本が無いか探しつつ残りの監視をしますね。拘束したら此処に運ぶように言っておきます。」
「分かったわ。」
くるりと回れ右をして病室を飛び出す。
後ろからトゥコーテンさんの楽しそうな声が聞こえた気がするが幻聴だろう。
獣人さん達の悲鳴なんか聞こえない聞こえない!




