狩りの時間。
「この街の案内板は随所に置かれておりますので、観光に是非役立ててください。」
「ありがとうございます。」
そう言って彼等を解放する。5人は少し何かを話した後それぞれ別の方向に歩きだした。
それを見届けて転移魔法ではなく自分の足で役所まで戻り。都市監視室と書かれた扉をノックして静かに入室する。
「行き先は?」
「市場、図書館、学校、畑、病院です。」
「ですよね。まぁそれくらいしかないから予測は簡単だったけども。」
沢山のモニターが所狭しと並べられたそのいくつかに先程の彼等が映っている。1人1体監視鴉を使って尾行中だ。
「側妃様は何を考えているやら…。」
「畑の仕組みを知りたいんじゃない?」
「レイル君!?学校は?」
「役所の人が学校宛に手紙飛ばしてくれてこっちに避難してきた。」
僕の存在はまだバレる訳にはいかないからね、と湯呑片手に隣に座る彼は何とも王子らしくない。
「職員が優秀で嬉しいよ。」
「皆サラが基盤を整えてくれているからのびのび仕事が出来てるしね。それでさっきの話だけど、ここの畑の仕組みを持ち帰って冷害を凌ごうとしてるんじゃないかな。あたかも側妃様が考案したとして。」
「それ、獣人部隊の人が裏切ったら大変そうね…。」
モニターの1つには電車に乗って畑の方へ移動しているゾンデルさんがいた。他の人も観光を楽しんでるように見えるが、目付きがとても鋭い。
盗める技術は盗もうという感じなのかな。
と、一挙一動見逃さないように睨んでいると、
「早すぎでしょ。」
「本当にね。」
視線の先の図書館の映像に溜息をつきたくなった。
「どうも。先程ぶりで。」
「貴様ッ…!コレに何を仕込んだ…!?」
「毒ですよ。貴方達が悪いことをしたら内側の針が起動して毒を流し込む仕組みです。」
残念でしたね、と床で藻掻いている獣人さんから本を抜き取る。表紙に少し焦げ目がついてしまっているが中には問題なさそうなのでホッとする。
周囲を見渡せば住民達が肩を寄せて避難していた。小さい子達は泣くのを我慢しているらしい。そりゃ、いきなり本に火を付けたら驚くよね。モニターにその瞬間が映し出された時にすぐ近くにいた子もいるし。
「死にはしないので安心してください。まぁ、解毒出来るのはうちの医療機関のトップしかいないので一生そのままですけど。」
どうやら毒との相性が悪かったらしい。
いつの間にか気絶していた獣人さんを一緒に連れてきた職員に任せて先に戻ってもらう。
「怖がらせちゃってごめんね?怪我はない?」
「だいじょーぶ!僕泣かなかったよ!偉い?」
「うん。カッコよかったよ。」
中身が結構な年齢なのでついヨシヨシなんて頭を撫でているが、現在の私は11歳の容姿だ。ちびっ子の戯れに見えるようで大人組が微笑ましく見てくる。悲しい。
まぁここに長居も出来ないので、手元の本と一緒に立ち去る。向こうにも連絡手段があった場合、急に音信不通になったのを不審に思い様子を見に来るに違いない。できれば全員やらかしたところを捕縛したいので、引き続きいつも通りの生活を皆にはお願いした。
あと4人。




