ぎこちなさ半端ないね。
「お待たせして申し訳ございません。ようこそ城塞都市アルテナへ。城主のサラと申します。」
「とんでもございません。ゾンデルといいます。」
数は5人。私の向かい側でニコニコしている彼等は何を思っているのだろう。残念ながら読心術は心得ていないので分からないが。
「皆様の観光を許可するにあたり、こちらを着用していただきます。」
「これは…?」
「私の街では住民全員がリストバンドを付けています。色の違うコレは観光客用で、皆様の安全の為に着用をお願いしております。」
恐らく部隊の1番偉い人であろうゾンデルさんに人数分のリストバンドを渡す。仕掛けを見抜かれやしないだろうかと内心ヒヤヒヤしていたが、そのまま各自に渡り着けてもらえて一安心。
「ありがとうございます。では、街の方にご案内させていただきますね。」
足止めをしてくれていた門番さんにお礼を言い、電車のホームまで彼等を導く。臨時で用意した電車に訝しげな視線を送っているが、私が無理矢理促し全員乗車させる。
「こちらは自動で目的地まで進むように出来ておりますので、どうぞゆるりと景色を堪能しつつお越しください。」
「え?貴女は…?」
「私は先に戻って皆様を歓迎する準備をしますので…。」
いってらっしゃーい、と前世の某テーマパークキャストのように笑顔で閉まる扉に手を降る。道中私から何か聞き出そうと思っていたようで、ゾンデルさんは見事な阿呆面をしていた。
よし、私も急がねば。
「ただいま。そっちは?」
「ちゃんと破壊してきたよ。怪我人もゼロだ。」
戻った役所の入口にはレイル君が待ち構えていた。告げられた報告に安堵しつつ、トゥコーテンさんは拗ねただろうなと笑ってしまった。
「皆は?」
「いつも通り生活してるよ。僕もこのまま学校に戻る。」
「うん、そうして。レイル君が第二王子なのが万が一にもバレたら厄介だから。」
「サラは規格外だから心配はしてないけど、何かあったら僕じゃなくても他の黒髪を呼びなよ?」
そう残して転移魔法で姿を消したレイル君。流石同じ黒髪と言うべきか、魔法の成長が著しい。他に黒髪は2人いるが、彼等も物凄いスピードで成長している。正直私達4人で戦力は十分な気もするが、如何せん私以外の3人の魔法は広範囲に渡る大規模なものに何故か特化していて、個々を守るにはなかなか厳しいのである。まだまだ発展させるつもりのこの都市で1人は流石に無理なので、住民の皆には頑張ってもらいたい。
そろそろこちらに到着するであろう電車を迎える為に駅へ。
降りてきた彼等は先程とは違った意味の阿呆面をしていた。まぁ、これには関しては誰でも最初はこうなるのでスルーさせてもらう。
「いや驚いた…。こんな乗り物見たことない…。」
「そうですね。オズマン侯爵も驚いておられました。改めまして、ようこそアルテナへ。」
さぁ、気を引き締めていこう。




