準備完了。
在宅勤務が出来ない職種なせいで不安と戦ってる毎日です。1日でも早く希望が見えますように。
騎士団の獣人部隊。
所謂囮のようなものだと聞いたことがある。獣人は肉体強化の魔法が得意で、人間よりも遥かに丈夫で強い。ルーヴさん達みたいに商人をやるのは女性の方が多く、男性のほとんどは軍であったりに所属しているが。
人間の犠牲者を出さない為に先駆けとして動く彼等。ここにも人間のエゴが垣間見える。
「先駆けが動いているということは、後続が来るのですか?」
「いや、どうやら王妃様が夜会にアルテナの人間を呼んだことが発端らしい。側妃様が探りを入れるべく独断で獣人部隊のみを動かしたって。」
「あぁ、"魔女"を恐れて人間は動かせなかったからですか。」
確かに人間以外の種族は黒髪に対して寛容である。彼等は上手いこと使われているのだろう。
職員は『王妃様の夜会』の方が気になるようで、コソコソ隣とお喋りしだした。
「勿論探りに来ましたなんてバカ正直に言ってきてないですよね?」
「自分達が城から来たと気付かれてないと思ってるみたいよ。集落の移動の途中で噂話を聞いたからお邪魔してみたいと言ってたわ。」
「それは…。何というか…。」
女性の集団ならまだ分かるが。如何にもな屈強の団体が何を言っているのか。トゥコーテンさん曰く、それとなく変装はしているものの、騎士団の腕章が隠し切れてない人もいるらしいし。
「如何が致しますか?」
「とりあえず緊急用のスピーカー使って住民全てに現状を伝えて。それで、いつも通りの生活をするようお願いして。」
「街に入れるの?」
「折角だから、このリストバンドのテストもしたいかなと。」
ポケットから取り出したのは紫色のリストバンド。住民や観光客が付けるソレとは異なるお客様用だ。
住民に危害を加えた場合、内側に仕込んだ針が突き刺さり毒が回るようになっている。更に私の魔法も組み込んであって、同時に『動くな』の魔法がかかる。
それを部屋にいる全員に説明すれば、先程よりは安堵の色合いが強まった顔を向けられる。
「リストバンドの説明もしておいてください。皆さん自身だけでなく、商品・建築物が壊れた場合も発動しますので。」
「相変わらずぶっ飛んでるわね。まぁ、だからこそ安心して着いていけるのだけど。」
お馴染みの視線をトゥコーテンさんに向けられ苦笑いしか出ない。
完璧な引き篭もりライフを送る為なら全力でチートを使っていきますよ、ええ。
「で、誰か彼等を案内するの?私が行こうか?」
「いや、私が行きます。トゥコーテンさんはレイル君達と合流してください。恐らく彼等は今、空に留まってる岩を破壊してると思うので。万が一飛び散って怪我人が出た時の為に居てほしいのです。」
「岩って…うわ、コレ?こんなの投げておいてよくもまぁ…。」
画面に映し出されていた映像を見てトゥコーテンさんはドン引きしている。だが、怪我人が出るかもしれないという状況に足取り軽く部屋を出ていった。患者来ないって言ってたからね、不謹慎でもワクワクしちゃうよね。
「では私も城門に向かいます。住民への伝達よろしくお願いします。」
「はい。お気を付けて。」
「それと、話し合いってなった時に此処を使おうと思っているので、掃除だけしておいてもらえると助かります。」
「分かりました。」
さぁ、お仕事しよう。




