続く不穏。
夜会の諸々に関してはレイル君に全て任せるとして。
「皆は何か困ってることあります?」
「僕は特に。」
「アタシもほとんど外にいるからあんまりにゃ。」
「しいて言えば患者?ここ、平和すぎてなかなか患者来ないのよね。」
講義ばっかりで疲れちゃう、って。トゥコーテンさん、それは良いことのはずですよ。なんてことを言ってるんですか貴女は。
「じゃぁ、今日は解散ですかね。もう少し役所の人が増えて質が上がってきたら、この会議もそっちでやることになるでしょう。」
「そうね。住民もだいぶ増えたし、よっぽどのこと以外は彼等にもやってもらわないと。」
「そもそも、こんにゃ大事な会議をアタシ達でやってるのが不思議だしにゃ。」
お開きムードになった途端に机に突っ伏したルーヴさんは少し疲れているようだ。もしかしたら遅くまでこの資料を作っていて寝不足なのかもしれない。
確か隣の部屋が仮眠室だったはずなのでそこから毛布を持ってきてあげようと席を立った時。
《ガンッ!!》
「「「「!?」」」」
何かが思いっきりぶつかった音に皆も立ち上がる。尋常じゃなかったその音に、ルーヴさんにいたっては耳を抑えて苦しそうだ。
その直後にポケットが振動する。急いで確認すれば、役所の複数の課からと城門からの呼び出し。
「なんでこんなに…!」
「私が城門の方に行くから、サラは役所の方に行きなさい。状況見てきてすぐ報告に行くわ。」
「じゃぁ僕達は街の様子を見てきましょう。これだけの音です。もしかしたら何か被害が出ているかもしれない。」
「そうだにゃ。サラ様は急ぐにゃ。」
焦る私に頼もしい事を言ってくれた3人に感動する。レイル君とルーヴさんはそのまま部屋を飛び出して行き、それに続こうとするトゥコーテンさんには転移魔法を発動させ押し込んだ。なんか文句言ってた気がするけど、後で怒られよう。
残ってたケーキを口に放り込み、自分も役所への転移を発動した。
「何があったのですか?」
呼び出しは複数だったが、役所はどの階もバタバタしていた。近くにいた職員に各課のトップを会議室に集合させるよう伝えて今に至る。
部屋の中はザワザワとしていて落ち着かない。
「まずはこちらを…。」
そう見せられたのは監視鴉の映像だ。
空の青が画面のほとんどを占め、下の方が少しだけ緑っぽい。どうやら茶畑辺りのようだ。
なんて推測を立てていたら急に画面に映り込んでくる物体。音量をゼロにしていてくれたのか、先程聴いたあの音はしなかったものの、鴉が衝撃で揺れているのが画面からはよく分かる。
「恐らく外からの攻撃です。サラ様が施されていた結界により大惨事は免れました。ただあれを破壊するだけの力を持った住民がおらず、この状態のままになっています。少々ヒビが入っているようなので、あれが落ちてくるのも時間の問題かと…。」
「レイル君が気付いていれば彼がやってくれると思います。一応彼に連絡を入れておいてください。」
扉に近い所にいた職員にお願いすれば、すぐに飛び出していってくれた。
それにしても、こんなにも早く結界が活用されるとは。外からの攻撃なら、さっきの城門からの呼び出しは敵襲の知らせだったのだろうか。
「先程こちらからの呼び出しと同時に城門の方からも連絡がありました。恐らく、外に何者かが居るんだと思います。」
私の言葉に更にザワつく室内。数人の顔が恐怖に染まってしまっている。
何とかしたいが、今はトゥコーテンさんのからの連絡を待つべきか。適当に励ましたところで現状が変わるわけでもないし。
「失礼します!城門からの使いがサラ様に面会を希望しております!」
「入ってきてくだい!」
なんてナイスなタイミング。
食い気味に許可を出して入ってきたのはやはりトゥコーテンさんだった。
「事が事だから緊急用の転移魔法使わせてもらったわ。」
「構いません。それで、外に何がいました?」
「あぁ、そこは分かっているのね。城の騎士団の獣人部隊よ。」
なんてまた厄介な。




