宙を舞う花の行く先。
お久しぶりです。遅くなってしまい申し訳ございません。
冷害が続くせいで残念ながらまだ晴れ間は見えないが。
白を纏う2人は誰よりも輝いていて眩しかった。
教会とウェディングドレスを作り上げた2日後。
ドレスと一緒に再び訪れた都市開発課には、既に今回の要望を出してきたカップルと役員、そして見知らぬ女性が談笑していた。私に気付いた役員が席を用意し、お茶を出してくれたのにお礼を言い着席する。
「遅くなって申し訳ありません。」
「いえ!とんでもないです!サラ様のおかけで何不自由無く暮らせて、こうして結婚式まで上げていただけるなんて…!」
感謝してもしきれないと、早くも感極まって泣き始める新婦さんに苦笑い。新郎さんにフォローを丸投げして視線を横に移す。それに気付いたのか、見知らぬ女性(よく見るとすごく上品な人だ)が口を開く。
「初めまして。イヴェンナと申します。」
「こちらこそ初めまして。ここの城主のサラです。」
毎回自己紹介する時に城主と名乗っているが、前にも言ったように城はない。やはり城に見えるように家の外観を幻影で誤魔化そうかしら。
「巷で噂のアルテナに住めるなんて光栄ですわ。」
「噂?」
「サラ様とお会いしたことはございませんが、私、侯爵家に出入りする人間でしたの。ルーヴさんにお誘いを受けた時に急いで侯爵様に相談させていただきましたら、彼処はマダムにも良い刺激になると太鼓判を。」
なんと父が。というか、イヴェンナさんは母達のお客さんだったのか。
ポカンとする私に更に彼女は続ける。
「それに近頃の日照不足による作物への対策等、侯爵様自らが領民に指示を出しました時にアルテナの魔女にご教授願ったと仰られて、今領民の間ではその話で持ちきりでしてよ。」
まさかその魔女が侯爵家の次女だとは思いもしませんでしたが、とこちらを見て微笑むイヴェンナさん。ルーヴさんからそんな話聞いてないのでただ驚くばかりである。父に関しても、黒髪と交流していることを大々的に宣言しているようなもので、城での仕事に影響が出やしないのだろうか。
「店は弟子達に任せてこちらに住民登録させていただきましたが…。既に働ける場所もあって、しかも最初の仕事が結婚式の衣装だなんて、とてもワクワクしますわ。」
私が持ってきたドレスをそのまま手渡せば彼女はとても嬉しそうに広げて眺める。自分が着るものだからか、新婦さんも泣き止んで一緒に見ている。デザインに関しては前世従兄弟の結婚式で見たのを必死に思い出して作ったものだから、正直この世界に合うのかは分からない。
「まぁ!なかなか素敵なデザイン!少し手を加えてサイズ調整すればすぐにでも着れますわ!」
帰って仕事がしたいだろうイヴェンナさんに残りの細かい作業をお願いすると、そのまま3人は役所を後にした。
そこから1週間。
事前に話を広めておいたのもあるしまだ娯楽が少ないせいもあってか、大きめに作った教会には人が溢れかえっていた。ギュウギュウに椅子に座った彼等は新郎新婦が登場した途端立ち上がりお祭り騒ぎ。急遽神父を務めてくれたエルフさんの咳払いに一旦落ち着くものの、退場時に再び騒ぎ出した。
そして2人が完全に姿を消した後、外に移動して待機しているわけだが。
「サラ様はブーケトス参加しないんですかー!?」
「私まだ11歳だからね?流石に早すぎるかと…。」
この世界にはブーケトスという文化はなかったらしく。昔の他国の書物にあったと嘘ついて、軽い気持ちで説明したら女性陣の食い付きが凄かった。今もやる気満々な彼女達にズルズルと引っ張られ有無を言わさず最前列に立たされてしまった。
いくら結婚適齢期が早い世界と言えど、私には早すぎる。というより、普通に恥ずかしい。
その場から脱出は叶わず、新郎新婦が教会から出てきたことで周囲のボルテージはMAXだ。
諦めるしかないと思ったのと、新婦が後ろ向きに立ってブーケを投げたのは同時だった気がする。万が一こちらに飛んできても私の身長は小さいから他の人がキャッチするはず。
「やった!獲ったわよ!」
「お、おめでとうござって、えぇ…!?」
歓喜の声に顔を向ければ、水色のシンプルなドレスに身を包みブーケ片手にガッツポーズするトゥコーテンさん。
貴女参加してたんかいとツッコんでしまったのはしょうがないと思う。




