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【完結】魔女の箱庭  作者: うかびぃ
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【???side】親子の企み


「貴方も手紙、書いてみる?」



そう母に言われて初めて書いた手紙はとても身内に送るものとは思えない他人行儀な文章になってしまった。隣で同じように手紙を書く母はとても優しい顔をしており、会ったこともない弟へ少しの嫉妬と、母の憂いを取り除いてくれた魔女への感謝で複雑な気持ちになる。


十数年前、まだ自分が4歳だった時。

普段なら笑顔を絶やさない侍女達の顔が絶望に染まり、父は激昂し、母は塞ぎこんだ。

弟が産まれたと聞かされワクワクしていた俺は母の元へ急いだが会えることはなく、【身体が弱い】らしい弟は隔離され、大きな病にかかりそのまま亡くなったとされていた。



母が変わったのはその後すぐだった。

仕事以外を城の図書館で過ごすようになりお茶会の回数が減った。

周りから見れば【息子を亡くして塞ぎこんだ】可哀想な王妃様。

その頃から既に母が来るべき日を待ち望んでいたなんて誰も知らない。



丁度1年半くらい前だろうか。

父である陛下に呼ばれ、執務室の隠し部屋で聞かされたのは大昔の戦争と黒髪の関係の真実。俺達王家が何よりも隠したいであろう歴史。

聞いて最初に思ったのは「阿保らしい」だ。弟のことも同時に告げられた時、やっと母が何をしていたか理解出来た。



図書館で見ていた黒髪についての歴史書も、時々誰もいないはずの離宮にこっそり行ってるのも。

父や宰相にそれとなく人種差別撤廃を訴えているのも。

病死したことになっている黒髪の弟を、いつか表に出す為だったと。



気付いてからの行動は早いもので。

母に詰め寄り話を聞き出し、側妃や第三王子にその意図を気付かれることがないように2人で奔走した。第三王子はともかく、側妃はやたら母に突っ掛かってきていて良い印象もないし、俺達の存在を疎ましく思っているようで。

少し前に無事弟を自由にした後に母は、



「私達も死んだことにしてアルテナでゆっくり過ごしたいわ。」



なんて愚痴を溢していた。母も側妃には困っているらしい。

それも有りかなと思ったのは弟から返事が届いた時だ。

会ったこともない俺を兄と呼び、向こうでの生活が楽しいと便箋3枚びっしり書いて寄越してくる弟レイルが羨ましくなった。

母が魔女から貰った手紙には、アルテナは種族も身分も関係無く自由に生活出来るらしい。あのヤシュカとも交流があるとか。



「冷害ね…。」

「確かにここ数週間晴れ間を見ていませんが王都でそんな話は聞かないみたいですし、間違いでは?」

「いいえ。本当に微々たるものだけど、王都の市場で値上がりしているみたいよ。」



渡されたのは貰った手紙に同封されていた資料だった。各領地と王都の値上がりの幅が項目毎に綺麗に書かれている。



「母上。アルテナは変動ないのですか?」

「レイルの手紙の方にサラさんが対策を講じて収穫量も値上がりも変化は無いと書いてあるわ。彼処は税を作物で納めているから、万が一影響が出ても納められたものを配布するそうよ。」



11歳の少女と思えない手腕ね、なんて母は面白そうに笑っている。確かに、過激派魔族の強襲を防ぐ為に王族と連携を取る少女なんて少しワクワクしてしまうが。



「魔族…。母上、弟は魔族とも仲が良いのですか?」

「観光客として当たり前のように居るからね。それに移住してきている人もいるようだから、接点はあると思うわよ?」



それがどうかしたの?と不思議そうに向けられる顔は、俺の言葉で満面の笑みになる。



「死んだことにして、アルテナで生活しよう。」



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