頼もしい協力者。
ストックなくなったので毎日更新ができなくなりました。申し訳ないです。
「殿下のことはフィオナ様にも確認しておきます。…さて、色々聞きたいのだが。」
「なんですか?」
レイル君に向けていた視線が私に戻ってくる。え、待って。レイル君の質問に答えてないよ?
「アルテナをお前は現状どうするつもりなんだ?」
「どうもしません。種族問わず身分問わず、皆平等に生活出来れば。」
「この後見学しても?」
「構いません。ただ、これを着用していただかないとですけど。」
テーブルに住民が使用しているリストバンドとは別の色のものを置く。
これはヤシュカとの交易が始まってから作った、観光客用のリストバンドだ。城門で受付後これを渡されるので滞在中は必ず着けてもらう。
住民と観光客、そして侵入者を区別する為だ。ルールを破り着けなかった観光客は今後一切アルテナへ入ることを禁止。所持すらしていない侵入者は言わずもがな。
「それを腕にはめてください。この都市での、身分等を証明するものとなります。帰る時に城門の担当者に返却してもらえれば。」
「毎回手続きが必要なのか?」
「はい。面倒ですが、害あるものを弾く為に必要なことなので。」
別に鎖国したいわけじゃない。ただこの国の差別意識に改善が見られない限り正門側を開けることはないだろう。
今この都市に黒髪は私とレイル君のみ。ただこれからもっと増えていくだろうし、人間よりも他の種族の方が割合が多い。
「分かった。帰りに先程の獣人に渡そう。」
「ありがとうございます。」
「レイル殿下はアルテナをどう思われておりますか?」
「殿下はやめてほしい。…此処は素晴らしいと思います。どの国でも見ることが出来ない乗り物があって、どの国でもお目にかかることがないような書物が貸し出しされていて、どの国よりも此処が1番、住民が幸せだと思います。」
「ほぅ。サラ、ヤシュカとも繋がりがあるようだが、何を企んでいる?」
「シュゼール国における人種及び他種族差別撤廃です。他国がヤシュカと結んでいる平和条約を我が国も締結し、真の戦争の終結を。」
国を動かす者としての鋭い視線がグサグサ刺さって痛い。今父は私を娘ではなく、城主として見ているのだろう。ヤシュカと手を組む理由がシュゼール国にとって不利なものだった時に私を止める為に。
戦争はそれこそ莫大な資金が必要になる。財務のトップである彼の頭の中は今ものすごい速さで電卓を叩いていそうだ。この世界には無いだろうけど。
重くなった空気に耐えられないのか、レイル君が緑茶を啜る回数がやたら多い。とうとう空になったのか、新しいの入れてくるねと残して退室してしまった。
逃げたな。
「フィオナ様が黒髪への待遇の改善を求めて第一王子と奔走している。」
「知っております。ただ、時間がないのです。」
そのまま続けてロシュロール殿下と交わした約束やその経緯を簡潔に説明すれば父は今までで一番大きなため息を吐いた。
「娘…それも11歳の、政と無縁な存在に戦争回避に動かれているとは情けない。」
「たまたま魔族の救出に成功し、たまたまその魔族がヤシュカで有名な商会長の息子だったからで…。」
「たまたま、でもだ。この事はまだフィオナ様に?」
「はい。お知らせしておりません。手紙を飛ばすにしてもなかなか時間がかかるので。」
「ならば私が何とかしよう。」
父がこめかみを揉みながら緑茶を音もたてず静かに飲む。これからのことを思って胃が痛くなっていそうだ。トゥコーテンさんに良く効く胃薬を用意してもらおうかしら。
そう心の中で労っていると父が立ち上がった。
「さて、そろそろ。私は少し見てから帰るが、お前は?」
「レイル君と街の方に戻ってお仕事ですかね。レイル君は学校で魔法の練習だと思います。」
見学にしろ仕事にしろ向かう先は中央なので、父とポツポツ会話を続けながら駅まで向かう。途中お茶を持ったレイル君と遭遇しそのまま3人で歩く。お茶は途中にあった警備室に待機していた獣人さんに差し入れた。
電車を見た父がそれはそれは驚き、実は緑茶に魅了されていて、図書館の広さに圧倒され、定期的にアルテナを訪れるようになるのをこの時の私は知らない。




