嫌われてはなかったようです。
昨日は結局1日ダラダラすることが出来なかったので、今日こそは!と最近の朝の習慣(天気確認)を終えてベッドに潜り込む。
二度寝チャレンジ!が、
「誰だ我の快眠を妨げたのは。」
「サラ落ち着いて!」
何だろうこのデジャヴ。
昨日と同じく城門に呼び出され見事にチャレンジ失敗だ。何なんだ。11歳にして社畜か?前世今世通して働いたことないけども。
昨日と違うのは呼び出したのがレイル君、ジャージではなく家を飛び出した時に着ていた服、
「久しぶりだな、サラ。」
目の前にいるのが、父ということだが。
「はぁ、お久しぶりです。王都に逃げて仕事してたせいで無駄遣いされていたようで。」
昨日の今日で行動起こすのが早すぎでしょ我が父よ。まぁ本来ならこっちに戻ってきてすぐに会いに来ようとしてたみたいだから準備は出来てたのだろうけど。
レイル君も一緒に呼び出したのは、フィオナ様から何か聞かされたのか。彼女は監視鴉に返事を持たせていて、定期的に息子の様子が知りたいと書かれていた。もしこの段階で素性を明かしてくれるなら、彼自身が手紙を書いて送る方がいいだろう。それくらいなら専用の鴉作るし。決して自分が出すのが面倒だからではない。
「返す言葉もないが。お前は侍女達に頼んで出来るだけ外の攻撃を受けないように隔離したはずだが。」
「姉や母が随分とやりたい放題していましたよ。私のお世話をしてくれていた侍女が母の豹変ぶりに嘆いてましたね。」
自分が産まれる前のことなので全てメロから聞いた話ではあるが、元々母はとても優秀だったらしい。王都で仕事をする父に代わり領地を上手く回せていたのは、母の手腕がとても令嬢が出来るようなものでなかったとか。
「その侍女はどうした?」
「私が母に出ていけと言われ屋敷を出た後すぐに辞めたそうです。」
「は?報告では家出と聞かされたが、アイツがそんなことを言ったのか?」
「まぁ、はい。おかげさまで自由に暮らせてハッピーなんで、戻ることは一切考えてないです。」
私の言葉のどの部分に反応したのか知らないが、余裕の無さそうな顔が少し緩んだ気がする。というか、母よ。嘘ついたのか。
先手を打って戻るつもりがないと告げたが却下されたらどうしよう。『動くな』『黙れ』『埋まれ』の3コンボ決めて納得してもらえるまで言い聞かせるしかないだろうか。
「あぁ…、その件に関しては構わない。こちらの方がお前にとって良い環境なら私は無理に戻ってこいとは言わない。」
「え、いいんですか?」
「今回の件においては私が祖父との約束を違えたのがそもそもの原因だからな。」
そう言って語られたのはオズマン侯爵家の家系図の話だった。本来なら後継者にのみ語られる話だが、男児が産まれていない現在誰にも知らされずしかも侯爵本人が忘れるという大失態のせいで、先祖返りした私をきちんと育てられなかったらしい。
ということは。
「じゃぁ、僕の家系にも魔術師がいたんですか…?」
先程までずっと隣で大人しくしていてくれたレイル君が口を開く。
「それについてですが。まず、第二王子であらせられる殿下がご存命だったこと、誠に嬉しく存じます。」
「え、知ってるんですか!?」
「フィオナ様より先日お伺い致しました。私の娘、サラも勿論知っております。」
「サラ…。」
「ごめんね。私も校長先生から話を聞くまでは知らなかったのよ。」
まぁそうよね。必死に隠してるつもりが実は既にバレてたとか恥ずかしいよね。
「僕は王子に戻るつもりはない。」
「殿下…。」
「ここの生活、凄く楽しいんだ。黒髪で良かったと思えるくらい。」
「レイル君…。」
どうしよう。
どうしよう。
どうしよう。
レイル君のキラキラした瞳にやられる。
おねーさんキュンキュンしちゃうじゃないか!




