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【完結】魔女の箱庭  作者: うかびぃ
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想定外と帰還。


箱庭で広げた居住区の半分が埋まってきた今日この頃。

時刻は10時少し前。畑の世話をして戻ってきた住民が、各々学校や職場に移動し賑やかになる時間だ。

定期的に街の様子を順番に見ている私の今日の予定は市場の視察である。最初は畑で獲れた作物がほとんどだったが、ルーヴさんやハドゥーク商会のおかけで外からの品も少しずつ増えてきている。海産物も目に付くようになった。

ただやはり一番目を引くのは、



「この抹茶の包み、デザイン可愛い…。」

「でしょ?うちの種族が昔から受け継いでる伝統的な柄なのよ!」



そう気軽に声を掛けてくれたのはウサギ耳のおばちゃんだ。このお店は工場と連携して茶葉を販売する唯一の店である。周りには此処から仕入れた茶葉を使った飲食店がちらほら。

国内からアルテナへはまだ受け入れてはないが、ヤシュカからは最初の交易のすぐ後から定期便が出るようになり、飲食店で観光客を見ることが増えてきた。抹茶にはまり過ぎて移住してきた人もいる。

折角だしトゥコーテンさんとお茶をしようと、同じく可愛らしいデザインな煎茶の茶葉が入った包みを購入し足取り軽く病院へ。

そのうち和菓子も作りたいなぁ、なんて。











「トゥコーテンさーん、遊び…に…き…たよ?」

「あ、サラ。丁度良かった。ちょっと時間いい?」

「はい、トゥコーテンさんとお茶しようと思ってきたので。それより、その子はどうしたんですか?」



診療室でトゥコーテンさんに肩を抱かれているのは、最近住み始めたばかりの子だ。確か私より2つ下だった気がする。

もうだいぶ暑くなってきたのに、何故か顔は真っ青で震えが止まらないらしい。



「何を聞いても【土、冷たい】しか言わなくなっちゃったのよ。昨日までは普通だったって同居者からは聞いたんだけど。」

「冷たい…。」



ただ土が冷たいだけなら、寝転んでひんやり気持ちいいって感想になるけど。

あれ?



「土、冷たいの?」

「冷たい…。…太陽見えない…。」

「え?それって。」

「…トゥコーテンさん、住民を広場に集めます。緊急事態です。ヤシュカの方も。」



「日照不足による作物の影響が出ます。」









たった1人の言葉を信じるなんて馬鹿といわれるかもしれないが、こちらには根拠がある。

日記にどの代にも時期は違えど冷害が発生していた記録があった。ただそれは全て原作始まってからの出来事で、こんなに早く発生するなんて!

恐らく診療室にいた子は土魔法との相性が相当良いのだろう。きっとまだ誰も気付けない段階で土の異変を感じ取ったのだ。感謝しかない。



広場での説明後、各自明日からの対策を徹底してもらうようにお願いして一安心。これで多少作物にダメージはあれど、最悪の事態は免れた。あと気になるとすれば、冷害がアルテナだけでなく、シュゼール国全土なのか。それとも他国を含む大陸全土か。

太陽となると大陸全土の可能性を考えていた方がいいかもしれない。食糧の備蓄はだいぶあるが、果たして。



帰って日記を読み返そうと転移魔法を発動しようとして、ポケットの辺りに違和感。スマホの画面を確認すれば、城門からの呼び出しだ。

この忙しい時になんなんだ。

仕方なく転移の行き先を城門に変えて正門へ向かう。



「サラ様すいません!冷害対策でお忙しい時に!」

「あぁ、既に誰かが手紙を寄越したんですね。それで、何が?」

「ルーヴさんが戻って来たのですが…。」


体格の良い熊の獣人さんの後ろから出てきたルーヴさんの顔色はよろしくない。



「忙しい所に更に忙しくさせちゃうんだけどにゃ…。」

「何か良くない噂でも聞いたんですか?」

「オズマン侯爵様が2日後に領地に戻って来るそうにゃ。」



あぁ、遂に戻ってくるのか。予想より遅かったけど。



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