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【完結】魔女の箱庭  作者: うかびぃ
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フラグクラッシャー。


「他の国は今ではそれなりですが、いまだにこの国の人種差別は激しい。黒髪である貴女も幼いのにこんなことをしているということは、生きるのにさぞ苦労されているのでしょう?いやなに、国を乗っ取るとか、そんな野蛮なことは思っていませんよ。ただ、友好条約の締結の話し合いの場にすら来ないシュゼールを少しばかり驚かすだけです。アルテナは外からはその概要が全く分からない。住民も外でアルテナの話をすることもない。隠れ蓑に絶好の場所なんです。」

「…ちなみに驚かすとは?」

「来年建国のお祝いがあるらしいじゃないですか。そこで少し遊ぼうかと。」



プロローグじゃないかこの計画!と叫ばなかった私を褒めて欲しい。まさかの王族が過激派なんて。



「それは陛下の指示なんですか?」

「兄上には余計なことをするなと怒られている。しかし私はこの現状をどうしても打破したい。こうして足踏みしている間にも同胞が蔑まれ、誘拐され、売られていく。長年それが当たり前のこの国が憎くてしょうがない。」



陛下はどうやら保守派のようだ。分からなくもない。

行動を起こしてまた戦争にでもなれば、魔術師が介入しないと公言している分次は長引く。そうなれば被害は両国甚大なものとなるだろう。

だが彼の主張も否定出来ない。魔族だけじゃなくエルフや獣人、同じ人間ですら奴隷として扱うこの国をなんとかしたい気持ちは、それこそ私が生きていく為に変えなければいけない1つだと思っている。

それでも力任せにやればいいってものでもないけど。



「少し時間をくれませんか。」

「何故。」

「現状の打破を考えているのは貴方だけではないかもしれません。」

「そう思うのは?」

「王妃が、この国の正妃が黒髪の待遇の改善を求めて裏で奔走していると小耳に挟んだことがあります。」

「ほう?正妃が?」



レイル君が第二王子なのは恐らく本当なのだろう。彼が最初に話していたことが事実なら、正妃フィオナ様は試行錯誤しているはず。



「私達の待遇が改善されれば他の種族にも目がいくと思います。何とかして向こうと連絡を取り、その方向に持っていくようにしますので…。」

「ふむ…。」



私の提案に長考を始めるのか瞳を閉じてしまった王弟殿下。その隣の商会長は出されていたお茶(私の気分で緑茶だ)にやっと口をつけて、「こんな飲み物は初めてだ…!」と何やら感動している。緑茶はないのか、なら交易に使えそうだ。



ここでこの交渉が決裂した場合、襲撃事件を防ぐのがだいぶ厳しくなりそうである。成立して、且つここを拠点に行動してくれるのなら監視もしやすい。交易も出来て更に発展させることも出来る。

駄目だった場合はヤシュカを諦めるしかないだろう。王族の頼みを断ることになるから、万が一攻め込まれてもいいように海側の戦力を整える必要が出てくるのがツラい。

残念な頭でアレコレ考えていれば結論が出たのだろう、静かに開けた王弟殿下の瞳が真っ直ぐにこちらを射抜く。



「わかりました。半年、待ちましょう。」

「あ、ありがとうございます!」

「ただし、失敗した場合は当初の予定通りにさせていただきますからね。」



その後誓約書をしたため金庫に保管。

待ってましたと言わんばかりの商会長が緑茶についてアレコレ聞いてくるのを、王弟殿下(ロシュロールと自己紹介された)と共に引き気味に対応しながら交易にも前向きに検討してもらえることに。

詳細は交易課と相談して欲しいと頼めば食い気味に場所を聞かれ、部屋を飛び出していった。

これは至急茶畑を増やさないといけないようだ。



「慌ただしくて申し訳ありません…。」

「いや、こちらとしてもありがたいので…。」



今頃交易課はパニックに違いない。特に魔族さんはお父さんの登場に慌てふためく姿が容易に想像出来る。



「それでは私も少し外で時間を潰してから彼と帰ることにします。急な訪問で申し訳ございませんでした。」

「こちらこそ、無謀な交渉を持ち掛けてしまい申し訳ないです。」



まだまだ引きこもり生活には辿り着けそうもないが仕方ない。

まずは半年、何としてでもフラグを折らないと。

役所入口でロシュロール殿下を見送り、すぐに転移魔法で自宅へ帰った。

箱庭をいじらなければ。


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