衝突。
更新が久しぶりすぎて設定等が滅茶苦茶になってる気がする…。矛盾していたらすいません。
「あらおはよう!お嬢ちゃんは早起きさんなのね!」
「おはようございます。」
昨晩粗方の予定が組めた私は早々に就寝、頭もスッキリしていて体も軽い。万全の状態で森に挑めそうだ。
やはり統一されてるらしい朝御飯を口へ運んでいると、まだ時間が早くて余裕があるのかオバサンその2がカウンター越しに話しかけてきた。
「お嬢ちゃんはオズマン領の子かしら?」
「いいえ、隣のドルベルド領です。父のお使いでこちらに来たのですが少々トラブルがありまして、ユリカゴに一晩お世話になりました。」
「商会の娘さんかしら?しっかりしてて羨ましいわぁ。うちの馬鹿息子もこれくらいマトモなら…。」
昨日情報を得る時に使おうと思っていた設定をスラスラと声に出す。なにやら感動されているが全く興味がない。延々と話される息子の愚痴を適当に相槌を入れて流し食事を片付けていく。
「それにしても、昨日領主様のとこの警備隊が来たからてっきりお嬢ちゃんが家出した娘さんかと思ったけれど…。」
「…警備隊が?」
「えぇ。なんでも黒い髪の異端者らしくてね、それでも領主様達は自分の娘だからと愛情を込めて育てていたのにいなくなってしまわれたとか。大層悲しまれておられるそうよ。」
昨日は部屋に戻ってすぐに防音の魔法を使って周りをシャットアウトしていたから気付かなかった。
それにしても予想していたより早く動き出したのには驚きだ。リーナが自分の侍女でも動かして私の様子でも確認しに来たのだろうか。
何れにせよ、モタモタしていれば危険なのは分かった。
「黒髪ならすぐ見つかりそうですね。領主様が娘さんを無事見つけられるよう、お祈りいたしますわ。」
そのままオバサンの世間話に付き合わされるのは勘弁だったので、父が待っていると適当に言って早々に宿屋をあとにした。まだだいぶ早い時間なのでどこのお店も準備中だ。中身を全て換金し、最後にトランクを破棄するか換金するかして身軽になってから長距離の移動がしたい。隣街まで歩いて行けば丁度お昼位には到着するだろうか。ならばそこまでは我慢しようか。今は少しでもこの街から離れなければ。
綺麗に舗装されたメインストリートを看板を頼りに進んでいけば段々と田舎道になっていく。隣街まで遠いわけではないけれど、間のこの辺りは農家がいくつか建つだけで静かだ。親に教わったのか、子供達が魔法で水やりをして楽しげに笑う声が響いている。
そして、重々しい複数の足音も。
「そこの者、この街の住人か?」
背後からの声に振り向けばよく知る家紋に見たことのある顔。予想以上の早さに内心舌打ちをしつつ、侯爵家警備隊の隊長へ礼をする。
「私めは隣の領、ドルベルドの住人でございます。貴族様の通行の邪魔になっていたのでしたら申し訳ございません。」
「いや、そんなことはいい。この辺りで黒い髪の少女を見かけなかったか?」
「黒い髪…。見たことありませんわ。」
「そうか…。いや待て。その鞄の模様は…。」
しまったと思った時には時既に遅し。あっという間に囲まれ剣先を向けられる。突然の事態に畑仕事をしていた家族達は悲鳴を上げて家の中へ逃げていった。
このトランク、侯爵家の人間には簡単に分かるものなのか。換金ではなく破棄すべきな物に決定だ。
「その荷物、置いていってもらおう。さもなくば…。」
「どっちにしろ始末しろって命令されてるんでしょう?残念だけど、私はまだ死ねないわ。」
私が言い終わるや否や飛び掛かってくる彼等を迎え撃つ為、構えをとる。
ーーー舞え。
浮かんだ言葉は無意識。足元の少しの砂利が宙を舞う。突如発生した風は直ぐに勢いを増し、4本の巨大な竜巻となり警備隊に襲い掛かった。
5人いた警備隊は私を呼び止めた隊長を残し地に臥せ、立っているのは私と彼のみ。状況把握に時間がかかっている内に逃げるか倒すか。
「詠唱も無しに魔法を…!?」
驚愕の色を含んだ彼の言葉。そこから判断するに、この世界の魔法は詠唱が必要不可欠なようだ。それを省いて発動させた私に、化け物でも見たかのような顔をする隊長。
なるほど。忌み嫌われる容姿は魔力に関係してるのかな。ラノベでよくある設定だね。
「何とでも言えばいいわ。無駄な殺生はしたくないからお帰りになってくれないかしら?」
もう一度先程の魔法を発動させる。今度は脅すだけでいいので規模は小さめに調整した。それだけでも十分効果はあったようで、呆気なく撤退してくれた。
ひとまず安堵するが第2陣が来ないとも限らない。こうなってくると隣街に寄る時間も惜しい。
ちらり、と。視線を右に持っていけば鬱蒼とした森。オズマンとドルベルドの間にある瘴気の森。間に位置するせいでドルベルドに行くには隣街を経由しないといけない。確か形だけの入口も隣街にあった気がするのだけど。
「女は度胸、ってね。」
周囲を見渡して人がいないのを確認して、私は森へと飛び込んだ。