あの時よりずっと青い空。
「なんか、教会前広場でかくなってない?」
「都市開発課に大きくしてほしいって要望が沢山入ってたからね。昨日やっておいたんだ。」
「あと、教会の中もかなり広くなってなかった?」
「住人の皆がどうしてもお祝いしたいって直談判に来たから、昨日ほぼ全員が入れるように調整したんだ。」
教会の中の方は明日あたりにでも戻しておくよ、と隣の新郎がニコニコしている。今日までトゥコーテンさん達に仕事止められていたし、箱庭もレイル君に任せっきりにしてたけど、確認くらいしておけばよかったと後悔。
先程まで教会内で式だったのだが、入場した瞬間その広さと人の多さにアホ面になって、共に入場した父に窘められた。絶対父だって知っていたはずなのになんで教えてくれなかったんだ。
以降は滞りなく進むと思いきや、誓いのキスに差し掛かった時にロシュロール殿下が泣き出したことにより、他の参列者のテンションが振り切れたのか騒ぎ出す始末。牧師役を務めてつれたトゥコーテンさんのお祖父さん(トゥコーテンさんがわざわざお願いしてくれていたらしい)の冷たい視線で少しずつ静けさを取り戻してなんとか終了。
現在、広場でのお披露目で隣への文句が止まらない。
「殿下が泣き始めた時はどうなるかと思ったけど、まぁ無事最後まで終わりそうだね。」
「ミリアさんから聞いたけど、明日あたりから殿下の傷心旅行にお供することになったんだってさ。」
「あぁ、確かに言ってたね。ヤケ酒に付き合ってたらそうなったと。」
最前列でおめでとうと叫んでいるオレンジとグリーンのドレスの二人組に視線を向ける。すっかり仲良くなってお揃いのデザインだなんてちょっと羨ましい。
そしてメロ、殿下に負けず劣らずの泣き顔になってるから。
「これ、ブーケトス凄いことになりそうだね。」
「既に男性陣が後ろに追いやられてる…。」
この日の為に最高の状態にした花で作成されたブーケはキラキラしていて、正直投げるのが勿体無い。
「…なんか暗くない?もしかして、結婚嫌だった?」
「え?まぁだいぶ急な感じはあったけど、嫌ではないよ。このブーケ綺麗だから、投げるの躊躇ってるだけ。」
少し不安気な顔で覗きこまれたので慌てて否定した。すぐに眩しい笑顔に戻って、でも泣きそうな顔で彼は空を仰いだ。
誰かの魔法で上空から降り注いでいたフラワーシャワーが終わる。侯爵家を飛び出した時より遥かに綺麗で青い空は、白い花びらによって更に美しく見える。
「ねぇサラ。」
「なんだいレイル君。」
「……ちゃんと幸せ?」
聞かなくても分かるだろうにわざわざ聞いてくるのはなんなのか。
「幸せだよ。勿論。」
だから、これからもダラダラする私と箱庭をいじりながら一緒にいてね。
次話で完結です。




