まともに話し合いできてる…のか?
拘束が解けた皇太子を両サイドの爆弾(魔術師と魔族)が脅迫し、再び座らせた後改めて拘束魔法をかける。爆弾がそのまま着席したので、私と父も座り直し話し合いの続きへ。
「そちらの要求はサラとの婚姻と?」
「あ、あぁ。…このま…娘に利用価値があると父上が判断したからな。」
恐らく魔女と言おうとしたのだろう。レイル君が火の玉片手にニコリとしたので言い直した皇太子は先程の話を繰り返した。
皇帝陛下は何を思って私に利用価値があると思ったのか。城門前での戦闘の様子を報告で聞いて軍事面の強化でも出来ると考えた、くらいしか思い浮かばないけど。
「我が国はエルフの里と交流がある。」
「知ってるよ。あそこの薬が無いと、回復魔法すらまともに使えない奴が多い帝国はすぐに潰れるもんね。」
「ぐっ…。…少し前に里へ遣いに出した奴が聞いた話だが…。」
そう言って続いた話は。
トゥコーテンさんの結婚で浮かれている人達に部下の人が色々話を聞いたそうだ。そこで変わり者だが天才のトゥコーテンさんの存在を知ったらしい。見た目はともかく里の誰よりも効果の高い薬が作れる存在を手に入れれば帝国も安泰なのではと思い皇帝陛下に進言。興味をもった皇帝陛下がちょくちょく里に遣いを送って情報を得る。芋づる式に私の存在も知られる。黒髪は受け入れられないが、戦の時は最前線で動いてもらえれば自国民の被害は最小限に抑えられるし、国民に披露する時はカツラでも被せて誤魔化せばいいし…とかなんとか。
「カツラで誤魔化せるって思ってるくらいなら、そこまで忌み嫌う必要ないよね。」
「それな。たかが髪の色が黒でちょっと他より強いだけでなんで嫌われなきゃいけないのってね。」
皇太子の頬を結構な力で突いてるレイル君の言葉に同意しかない。「ちょっと強い…?」って横から聞こえたけど、父よ、一応貴方も黒髪が先祖にいる時点で他の貴族よりは強いと思うが。
「その話、断ったらどうなるんですか?」
「…実力行使しかなかろう。」
「え?僕達に喧嘩売るの?ウケる。」
煽ってくれるなレイル君。穏便に済ませることが出来ればそれでいいのだから。それと父よ、緑茶で胃薬を飲むのはオススメしないぞ。
「皇帝陛下は穏健派と聞いていますが、まぁ実力行使したところで瞬殺ですよね。」
「何故そう思うんだ。」
「だって、非常に残念ですが、非常に阻止したいところですが。貴殿らが望むエルフの里の天才は、近い将来彼女の義姉になりますから。此処の人間と縁が出来る以上、帝国の肩を持つとは思えませんが。」
最もなことを言うロシュロール殿下に皇太子が撃沈したのは言うまでもない。




