獅子、襲来。
またニートになってしまった…。早く仕事見つけないとだけど、ストックも作りたい…。
バイオレンス夫婦からアルテナに戻ってきた後のことをもう一度聞いて帰宅してもらってから、自宅のキッチンにこっそり侵入し冷蔵庫から食糧をくすねる。いや、だからなんで自宅でコソコソしなきゃいけないのよ。
仕方ないんだけどさ。
「バタバタしてたせいで向こうで珍しいもの見つけられなかったのは残念だなぁ。」
ティオさんの所に行くには国一つ移動しなければならないので、気軽に旅行ってわけにはいかない。エルフの国みたいに魔法陣は設置できていないし。
それに、またすぐに居なくなったらトゥコーテンさん達に怒られそう。避けたい。
「…レイル君、大丈夫かな…。」
助けに入った時の姿を思い出して身震いする。あのまま死んでしまうのではというほどの出血は、死体ほどではないが精神衛生上よろしくない。
カイル様がヤシュカに救援要請を出していたようで、私達が引っ込んだ後周囲の様子を見に行ってくれたと言っていた。だいぶ離れた所まで流された帝国軍と王太子妃は無惨な最後を遂げていたと。
城に飛ばしていた鴉の映像も確認したが、そこから新たに此方へ向かっている兵もなく、城内は当初聞いていた通り王太子の手引きであっけなく制圧され。
ここから皇太子は捕縛した王太子を連れて自国に戻るのだろう。
彼は優秀だったとうちの元王族は何度も言っていた。余計なことを考えなければ立派な王になれていたかもしれないのに。
「明日は一度書斎にいって先代達の日記を読み返そうかな。」
万が一を考えて書いていた自分の日記をあそこにしまうついでに、最後にもう一度彼女達の記録に目を通してみるのも悪くないと思った。悲願を達したから、今後あの部屋に入る必要もなくなるし。
これからは自由だ。父達に仕事を押し付けてしまうのは申し訳ないが、なんだかんだ楽しそうにしているし、上手く機能しているし心配はしていない。
カイル様に手紙を飛ばしてレイル君の明日の予定を確認してもらう。すぐに返事が返ってきて、彼の居ない時間帯に忍び込むことが可能なのも把握。
「少し落ち着いたらヤシュカの人達にも顔見せないとだよなぁ。」
それでもこれからは引き籠り万歳な生活が送れると思ったのに。
「ぐぅぉらぁ!早くアタシの可愛いサラちゃんに会わせなさい!使えない男共め!」
「ティオ様!落ち着いてください!」
なんで私は早朝からトゥコーテンさんに引き摺られて城門の会議室に居るんだ…?




