私だってやれば出来るんです。
もし彼が思い出してくれていたら。
なんて期待はしちゃいけない。
「ティオさんすいません。ここにもう一人呼んでも構わないですか?」
「あぁ、貴女の所の商人が滞在していたわね。」
「はい。彼にも聞いておいてほしいと思いまして。」
快諾してくれたティオさんは、先程の部下に指示を出してお茶を再開した。それに倣って私も一緒に出されていたお茶菓子に手を伸ばす。あれ?これよく見たら、うちで作ってるお菓子じゃないか?
こんな遠くまで行商していたことに内心驚いていると、少し顔色の悪い彼が部下の人に背負われてやってきた。
部下さん、カンガルーだもんね。ぴょんぴょんしてめちゃめちゃ酔いそうよね。というか酔うよね。
「すいません、飛ばし過ぎました。」
「大丈夫ですか?」
「……問題ない、です…。」
いや、問題しかないでしょってツッコミは入れない。とりあえず彼にお茶を渡して、私が聞いた話をもう一度ティオさんにお願いする。
「なるほど…。考えられるのは、レイル殿が変装をして前線で楽しく魔法を乱発していて別の人間がメドニエを急襲したか、レイル殿自身がメドニエを燃やしに行ったか…。」
「あぁ、その線もありましたね…。というか、楽しそうに攻撃してる姿しか思い浮かばなくなってきた…。」
「それで、これを私に聞かせてどうしろと?」
「メドニエを急襲した魔術師を調べてほしいの。私と同じローブを着ている以上身内だと思うのだけど、万が一そうでなかったら保護してほしくて。それでそのままアルテナに戻ってトゥコーテンさん達に報告してください。ついでに、数日したらそっちに戻るとも。」
彼の発言に、正門で火の玉片手にニコニコしているレイル君が想像出来てしまい遠い目になる。あの子本当に戦闘狂というか、いや、ちゃんと貢献してくれてるからいいんだけども。昔はもっと大人しかったんだけどなぁ。
脱線しかけた私を彼が上手く引き戻してくれたので、続けてお願いを口にすればだいぶ驚いた顔をされる。魔術師の捜索はなんとなく予想は出来ていただろうけど、流石にこんなに早くアルテナに戻るって口にするとはと。
私だってまだ帰るのは嫌だけど、やっぱり自分だけ何もしないのは申し訳ない。
「此処に持ってきている荷物ってどこにある?結構多い?」
「サラ様が使用している小屋の2つ隣です。そんなに荷物はありませんが…、何をするつもりで?」
「分かった。私がそれ持ってアルテナ戻るから、今このままメドニエに向かって。」
「えぇ!?私、メドニエは素通りしただけだから、転移は難しいですよ!?」
「私が今から飛ばす。…もし、変な所飛んだら、ごめんね?」
後日アルテナで再会した彼に聞いたところ、ちゃんとメドニエの城の前に飛ばせていたらしい。
それでもだいぶ怒られた解せぬ。




