ちょっとした再会。
「いらっしゃーい!ずっと会いたかったのよぉ!」
「あ、はえ、初めまして。」
ぎゅうぎゅうと潰れない絶妙な力で抱きしめてくる存在にタジタジである。
てっきりおじいちゃんだと思っていたのに、案内された部屋で待っていたのは綺麗なお姉さん。
そう、ここは、獣人の国。
「急に来るからびっくりしちゃった。ルーヴも何も言ってなかったし。」
「少々事情がありまして…。できればしばらくの間こちらに匿っていただきたく…。」
「…何か訳アリな感じ?」
緩い空気がちょっとだけ引き締まる。金色の髪をかきあげてこちらを見つめるお姉さん(ティオさんと呼ばれていた)にここ数日の出来事を事細かに説明すれば。
「やだわ!なんでこんな小さな子がそんな苦労をしなきゃいけないのよ!まったく!うちの男どもめ!」
「いや、呪われていた以上仕方ないことで…。」
「いいわよ!気が済むまでいくらでもいて頂戴!あっちにサラちゃんの情報が漏れないようにここの奴等はしっかり脅しとくから!」
「物騒なこと言わないでください!…でも、ありがとうございます。」
手にしていた扇子を真っ二つにして憤っているティオさん滅茶苦茶怖い。後ろで控えてるウサ耳の男性なんか震えてるからね。私の後ろにいる男性からは溜息聞こえてきたけど。
空いている小屋を使って構わないと言われたので早速探しに行こうとお暇し、外を徘徊する。国とは言われているが、アルテナで話を聞いていた通りどちらかといえば集落に近い。別の大陸にはもっとちゃんとした国があるらしい。いつか行ってみたい。
「空いてる中だとここが一番使いやすいと思います。」
先程のウサ耳さんがわざわざ追いかけてきてくれて案内してくれた。まだ仕事があるらしくすぐに戻ってしまったのでお礼が出来なかったけど。あとでまたティオさんの所に行かねば。
定期的に掃除しているのか綺麗な状態の部屋なおかげで荷解きもすぐに終わりそうだ。
「あれ、サラ様?」
「ん?…あ、君は。」
換気の為に開けた窓のちょうど向こうから見えた顔は、ここに居るにはいささか違和感のある人物。
「ハドゥーク商会の息子さんが何故ここに?」
「ちょっと野暮用を父に頼まれて…。サラ様こそ何故この国に?トゥ先生のご実家に挨拶に行ってそのまま戦争に備えるはずでは?」
よく見れば商会紋の入った服を着ている彼はお遣いを頼まれたらしい。
まさかこんな所で呪いの影響を受けていない住人に遭遇するとは。
「少々厄介なことがありまして…。」
「監視鴉が来なくなったことと関係ありそうですね。この近くの食堂でご飯でも食べながら近況報告でもしませんか?」
彼の指差す方に視線を持っていけば、青空の下いくつかのテーブルで騒いでいる人混みを捉えた。
荷解きは帰ってきてからでもいいだろう。そう判断して最低限の荷物だけを手に外へ飛び出した。




