姉と妹。
明けましておめでとうございます。今年もよろしくお願いします。
「う…っ。ぁれ、起きれた…?」
少しだけ軽くなった体と目覚めたことへの疑問が頭をいっぱいにするが、そんな余裕は無いとなんとか立ち上がる。周りをよく見れば住民がそこかしこで倒れている。
倒れる前同様上を見れば、やはり役所の屋根に何かが刺さっている。ここからでは遠いし暗いので確認が出来ないし近付くことも無理だろう。箱庭で確認するのがベストだと思い自宅へ向かう。
(絶対原因はあれだから早く抜かないと…。家が無事でよかったよ…。でもレイル君は此処にいないから、役所で倒れてるのかな…。)
玄関で靴を揃えることすらせず真っ直ぐに箱庭部屋へ向かう。途中の彼の部屋から気配は無かった。彼がこの家に居れば恐らく箱庭を使って何とかしようとするはずだし、突き刺さったままということは留守なのだろう。余計急がなければと扉を乱暴に開けて箱庭を覗き込む。
「杖…?」
魔法使いが使うような杖にしては大きすぎるがそんな形状をしている。
まずはこれを抜かないととソレに触れたがバチっと音がして弾かれてしまう。箱庭でも不可能なのかと絶望していると、
『この前ぶりね、会いたかったわ。』
「ヒロイン…?」
『これに触れたってことはどこかから攻撃して破壊しようとしたんでしょうね。でも無駄よ。これは呪いなんですもの。』
「…呪い?」
窓の外から聞こえてきた声にそちらへ近寄れば大きなスピーカーみたいなものが浮いている。なるほど、アレに何かすると発動するようになっていたのか。実際彼女がいるわけではなく録音されたものなのだろう。
にしても呪いとは。メドニエはヤシュカが監視していてこんなこと出来ないと思うのだが。
『アンタを呪った女の部屋の資料すべて回収されたと思ったら、お姫様の部屋に一部隠していたみたいでね。たまたま見つけちゃって面白そうだから使ってみたの。どうかしら?』
『アンタがストーリー通りに動かないから本来の王太子様とは結ばれなかったけど、隣の国へ飛ばしてくれて感謝はしてるわ。あとはアンタが舞台から降りてくれれば私はハッピーエンド!』
『アンタ一人じゃ何も出来ないでしょ?そのままそこの奴らと一緒にくたばりなさいな。』
『なんか魔力を吸い取って眠ったように命を落とす呪いらしいわよ?よかったわね、苦しまずにすむじゃない?』
『じゃ、さよーなら。』
ぶつんっ。
「…まだ皆は生きてる。私だって何故か生きてる…。あの二人も帰ってきてないから大丈夫…。絶対死なせない、解呪する………くそっ!」
自分の無力さに吐き気がする。




