森は後で元通りにしました(エルフの人達が)。
現状壊滅した森を元に戻している余裕が無いので、申し訳ないが放置をして先を急ぎ。
トゥコーテンさんの故郷に到着したのは日が落ちる少し前だった。
ひっそりした入口の横にまず魔法陣を設置させてもらい、鬱蒼とした道すらない森を彼女の案内で進んでいく。少し余所見をすれば確実に迷いそうな所がかつての瘴気の森を思わせて懐かしい。魔素が潤沢なのもよく感じる。
「おぉ孫よ!久しぶりじゃのぅ!」
「おじいちゃん!?」
そうして辿り着いた先、私達を出迎えてくれたのはヨボヨボのおじいさんだった。隣にはキルト君と知らない男性もいる。恐らく彼が父親なのだろう。
隣のカイル様が姿勢を正したのが分かった。
「初めまして。ようこそおいでくださいました。立ち話もなんですからどうぞこちらへ。」
暫定お父さんが丁寧に腰を折って私達を案内していく。一番奥の大きな建物まで足を進めたが、これ他のより立派でまるで偉い人の住む所みたいじゃないか。
外観の通り中も立派だが、通された応接室らしき部屋には神秘的な其処には相応しくない無骨な大剣が飾ってある。聞けば帝国からの贈り物で友好の証なんだとか。
「さて、改めて。おかえりトゥ。そして初めまして魔術師殿と婿殿。」
「ただいまおじいちゃん。」
「「初めまして。」」
元々緩んでいた顔を更に緩めて、おじいさんは本当に嬉しそうにトゥコーテンさんを見ている。私もいつかあぁやって父に喜んでもらえるのだろうか。
そのままの表情でこちらにも挨拶してくれたので緊張は解れたが、カイル様はそうもいかないらしい。婿殿と言われた瞬間大きく深呼吸したのを見るに、覚悟を決めたのだろう。
「この度は事前にご挨拶もせず大事なお孫さんと婚姻を結んでしまったこと、まことに申し訳ございません。」
「えぇんじゃよ。婿殿は表向き死んだことになってるから動けなかったじゃろうし。長年家出していた孫が帰ってきて、しかも婿まで連れてきたなんて…これほど嬉しいことはないよ。」
キミの魔力でぽっくり逝きそうだったがのぅと豪快に笑うおじいさんだが、笑いながら言うことじゃないですよともツッコめず。後に親族一同に挨拶すると簡単に説明され、この件は終わりらしい。あっけなさすぎてカイル様ポカンとしててウケる。というか、カイル様のことも知っていたのか。キルト君が報告してくれたのかな。
「トゥのことは良しとして…。まず確認なんじゃが、帝国寄りの森が抉れてるらしいと近くで採取していた部下から報告があってのぅ。更には川の水が飛んでいったとよぅ分からん目撃もあってな。何か知っとるか?」
自己紹介もせずに土下座することになるとは。




