やはり改良の必要がありますね。
「アンタ!万が一コレ見られたらどーするつもりよ!」
「大丈夫ですよ、多分。あの時も誰にも見つかりませんでしたし。」
草木も眠る丑三つ時って前世では言われていた真夜中。
真夜中に移動できるじゃんと過去の自分に感謝しながら何も分かっていない新婚さんを促し宿を出発。急な予定変更で宿の人には大変申し訳なかったが、嫌な顔せず協力してくれたのでこれにも感謝。
キルト君が残してくれた地図に追加されたもう一つのルート。主に裏道を使う一番危険なルートを現在全速力で進行している。
いつかのバスに乗って。
「いやぁ、この鞄あの時使ってからそのままにしてたからすっかり忘れてたんですよ。出発前は中身確認せずに必要なもの詰めただけだったんで。」
「サラ、これは…。」
「街を走っている乗り物のベースですね。ちょっと…いや、かなり揺れるんで気持ち悪くなっちゃうかもしれないですけど我慢してください。」
トゥコーテンさんに頼まれて子供達を救出した帰りのバスが入れっぱなしなんて何たるラッキー。何も手を加えていないので乗り心地は悪いままだけど。レイル君と初めて会ったのもこの日だったよねぇ懐かしい。帰ったら二人で改良するのもいいかも。
「今どの辺か分かりますかー?」
「外の景色いっさい分からないのに把握できるわけないでしょうが!」
王太子も流石に真夜中に移動するとは思っていないだろうし、日が昇ると同時に国を出れれば追手を寄越すのも不可能だろうから急いでいるのに。
後ろでギャーギャー騒ぐトゥコーテンさんの言う通りに一度バスを止めて外を確認してもらう。裏道だけじゃ現在地を把握するのは難しいので一度大通りに出てもらわないとだが。
「ちょっと!全然違う所よ此処!なんであの時みたいにまっすぐ目的地に着けないのよ!」
「アレはアルテナに帰るだけでしたし、ちゃんと登録してあったから自動で動いてくれたんですよ!流石に知らない土地は無理ですって!」
「ちゃんと地図の通りに走れば問題ないでしょうが!」
鬼の形相の彼女に弁明すれば、ゴツンッ!!と頭に強烈な一撃をもらってしまった。そんな私達を見てカイル様が大爆笑しているが助けてくださいよ。
「もう!アンタは…!いい?今は此処ね。この先はちゃんと地図見ながら進みなさい。…急ぎたいのも分かるけど、それでアンタが危険に晒されたらレイルが暴走するからね。」
「…善処します。」
隣でトゥコーテンさんに見られながら進めば、ちゃんと夜明け前に目的地に到着出来た。
それまでに何度か速度を上げようとして、その度に拳骨が落ちて笑い声が響いたけども。




