一難去って?
閲覧、ブクマ、評価ありがとうございます。ストックなくなってしまいました。必死に作業していますが、更新止まったらすいません。
街に到着してキルト君が手配してくれた宿はエルフの人が経営しているこぢんまりとした、でも綺麗な建物だった。物々しいイメージの帝国に驚く程馴染んでいない。聞けばエルフからの行商人が主に使う場所らしい。
「あ、鴉。」
ようやく落ち着けるとベッドへのダイブを阻止したのはアルテナからの鴉だった。今回はレイル君専用じゃない。何か報告があるのだろうか。
「ロシュロール殿下が来たのか。交易再開にあたっての必要事項ねぇ…。」
報告書の前半は急拵えの施設確認の内容だった。換気に問題がありそうで改善しておくとのこと。うん、やっぱりレイル君が居てくれてよかった。
後半はお客さん、ロシュロール殿下が来て交易再開の嘆願書を持ってきたらしい。意外と早かったなとも思うけど、まぁ問題ないだろう。とりあえず以前から取引してる商品に関しては許可して、大福とかのお披露目はまた今度にしよう。
それ以外はこちらの利益になるように勝手にやってくれたらいいと返信用のメモ用紙につらつらと書き、窓際の鴉に渡す。小さく跳ねた後、飛び去っていった。
(言う程こちらに損はないな。戦争の件もちゃんと把握しててメドニエの牽制をしてくれる、うん、悪くない。バタバタしてるところにヒロインが余計なことしてきたら困るしね。)
強制力が働くことが分かっている以上あまり楽観視することも出来ないけど。過去の日記を見る限り彼女に祝福なんてものは備わっていないはずだし、本来旦那になるはずであるカイル様はこちらにいるし。確かカイル様にも何かしらの祝福があって、それが彼女に必要だったような。
うーん、最近レイル君がいるから見返していなかったけど、帰ったら一度書斎に籠ろうかな。
「サラ、いる?」
「いますよー。」
強めのノックの後すぐに聞こえてきた声はトゥコーテンさんだった。部屋を一緒にしても良かったのだけど、新婚さんなのでそこは配慮しましたとも。私ったら優しい。
「どうかしましたか?」
「キルトが一度報告しに戻ってるんだけど…。」
「あぁ、祝福ですか。」
「えぇ、なんか回復薬増産要員で捕まってこちらに戻ってくるのが難しいって。」
宿宛ての手紙を手渡され確認する。
開戦の準備が予定より早く進んでいる為に催促されているらしい。普段ならお断り案件らしいが、通常の倍報酬を払うと言われて偉い人がウキウキしているとのこと。私達には申し訳ないが、三人で此処からは来てほしいと。
「…これは誰に文句を言えばいいんですかね?」
「シュゼールの王太子でいいんじゃないかしら。一応地図は預かっているから、ちゃんと確認しておきましょ。」
いやいや不安過ぎるでしょ。見知らぬ土地だし私達の居場所は把握されているわけだし。
もうこうなったら真夜中に移動するしか…。
あ。




